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外国人社員の日本語力問題!「読む」力の伸ばし方

外国人社員の日本語力問題!「読む」力の伸ばし方

日本国内の労働者不足を背景に外国人社員を採用したものの、日本語能力が思った以上に不足していて、戸惑いを隠せない担当者も多いはず。この記事では、外国人社員の日本語力、特に業界・職種を問わず求められ、個人差も大きい「読む」力をどのように伸ばせば良いのかについて、日本語教育の観点から具体的な方法をご紹介します。

なぜ日本語が読めない?原因を分析する

漢字に圧倒されてしまう

非漢字圏の外国人社員の多くが苦労するのが、なんといっても漢字。日本語には常用漢字だけでも約2,000字あり、「未」と「末」、「適」と「敵」など、形が似ている漢字も少なくありません。またビジネス現場では、ひらがなを使った易しい表現より、漢字を使った難しい表現がより好まれる傾向にあり、漢字がぎっしり詰まった文を見て「自分には無理だ!」と早々に読むことをあきらめてしまうケースもあります。

語彙が不足している

ビジネス特有の語彙や業務に関連する専門用語につまずいて読めないケースがあります。敬語表現も語彙レベルを難しくしている一つの要因です。例えば、日本のビジネスパーソンにとってはお馴染みの「本件につきましては、貴社のご意向を鑑み…」という文章で、冒頭の「本件」につまずき、その後の「貴社」「意向」「鑑み」といった語彙の連続にノックアウトされてしまい、文章の読解自体をあきらめてしまう外国人社員も少なくないでしょう。

文構造が理解できない

日本語の語順は自由度が高く「明日部長にメールを送る」でも「メールを明日部長に送る」でも問題がありません。また文脈から明らかな場合、主語や目的語などは省略することも可能です。このような日本語の特徴は、外国人社員にとって、文構造をわかりにくくする要因になりえます。外国人学習者向けの教材ではレベルの高い文章が読めるのに、私たち日本人が日常的に書く文章はよくわからない、ということは往々にして起こるのです。

読むこと自体に抵抗がある

これは外国人社員に限ったことではありませんが、文章を読むこと自体に抵抗を感じる人も少なからずいます。特にこれまでの職場では、文章をわざわざ読まなくても、周りの人との口頭コミュニケーションだけで問題がなかった、という人はその傾向が顕著です。また昨今、仕事外の環境でも、音声や動画による伝達機会が増えており、その影響で、言語を問わず、読むことが億劫になっている人もいるかもしれません。

行間が読めない

メールなど、双方向のコミュニケーションが求められる日本語の文章では、時にはっきりと明示されていない相手のメッセージを文脈から読み取る必要があります。例えば、こちらからの具体的な提案に対して、相手が「前向きに検討します」とだけ返事してきた場合、日本人であれば「実際には採用されない可能性もある」と考えることでしょう。しかし、外国人社員の中には行間を読むことができず、文字通りに受け取ってしまい、相手の意図を誤解してしまうことがあります。

外国人社員の「読む力」の伸ばし方

必要な漢字・語彙のインプット

まずは、業務に直結する漢字や語彙をリストアップし、重点的に学習しましょう。特に漢字については、少し時間はかかりますが、書く練習もあわせて行うことをおすすめします。書く際は、漢字のパーツを意識しながら、アナログに手書きすることが大切です。例えば「解」という漢字であれば、角、刀、牛というパーツを意識します。この地道なステップを重ねることで、読める漢字が増え、語彙の理解も深まっていきます。

業務マニュアルの音読

ビジネスパーソンには黙読できることが求められますが、私たちは黙読する際にも、目で見た文字を頭の中で音声化して理解しています。だからこそ、音読練習は正しく黙読できるようになるためには欠かせないステップ。素材としては、業務に関連するマニュアルや典型的なメール文面など、現場に即したものがおすすめです。音読は視覚と聴覚を同時に刺激するので、語彙の定着も助けますし、発音やリズムも向上し、総合的な日本語力の向上にもつながるでしょう。

レベルに応じた読解練習に取り組む

業務外で読むトレーニングを重ねることも不可欠です。その際、一人一人の日本語能力に合った教材を選ぶことが非常に重要です。時折、日本の子ども用の学習教材を使おうとする人もいますが、既に母語で高い認知力を持った外国人社員には、本人の認知レベルにあった教材を選ぶことが大切です。具体的には、ビジネス日本語教材やNHKのやさしいことばニュースなどを使い、日本語教師の指導のもと、正しく読めているかを確認しながら読解練習を行うのがおすすめです。また日本語能力試験(JLPT)やビジネス日本語能力テスト(BJT)の受験など、目標を設定して読解練習を継続することもプラスとなるでしょう。

まとめ

外国人社員の「読む」力を向上させるためには、漢字や語彙の習得とあわせて、読むトレーニングを根気強く続ける必要があります。どのような業界・職種でも、文章を読む力がビジネスをすすめる上で不可欠である以上、読解力の向上は、業務の効率化や職場コミュニケーションの円滑化につながります。外国人社員の成長は、企業全体の生産性向上にも大きく貢献することでしょう。

株式会社TCJグローバルでは、即戦力となる外国人材の育成に力を入れています。 日本語教育やビジネスマナー研修を提供し、外国人社員がスムーズに職場に適応できるようサポートします。さらに、日本人社員向けの異文化理解研修を実施し、外国人労働者を円滑に受け入れるための社内体制づくりを支援しています。また、企業様のニーズに応じた人材紹介を行い、外国人社員の定着と活躍を幅広くサポートします。外国人材の採用や定着に関するご相談は、どうぞお気軽にお問い合わせください。

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著者紹介:福田 祥子(日本語教師・ライター)
大手教育系企業で英語講師養成トレーナーとしてキャリアをスタートし、その後広報職に転身。企業内ライターとして新聞コラムや書籍等の執筆を担当。語学好きが高じ、2020年より日本語教師として活動を開始。2022年のスペイン移住後は現地の日本語学校で教鞭を執るほか、TCJプライベート講師や日本語試験問題作成員、執筆業に従事。日本語教師養成講座420時間修了、日本語教育能力検定試験合格。

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記事を書いた人

外国人材TIME編集部