近年、国内の労働力不足を背景に、多くの企業が外国人社員の採用を進めています。しかし、実際に採用してみると、日本語能力、とくに「話す」力が不足しており、業務遂行や社内コミュニケーションに課題を感じる人事担当者も少なくありません。日本語能力試験(JLPT)で一定のレベルを取得しているはずなのに、実際の業務現場でスムーズに会話ができない...。本記事では、そんなお悩みをお持ちの外国人採用・育成担当者に日本語教育の観点から、外国人社員の「話す」力を向上させるための具体的な方法をお伝えします。なぜ日本語が話せない?原因を把握する話す機会がそもそも少ない多くの外国人労働者は、日本語を勉強していたとしても、実際に話す機会や時間はかなり限られています。特に、職場での会話が業務指示や報告のみに限定されると、1日の中で一体何分、本人が日本語を話しているのでしょうか。また、業務外でも日本人の友人がいなければ、日本に住んでいるにも関わらず、全く日本語を話さないで生活している、という環境も十分考えられます。職場が話しにくい環境社内の雰囲気が堅苦しかったり、教育担当者がいつも忙しそうにしていたりすると、外国人社員が話しかけにくいと感じ、積極的に会話をする機会を失ってしまいます。また、日本人社員側も「相手が日本語を理解しているかわからない」と考え、積極的に話しかけないケースもよくあります。敬語が怖い敬語は日本語の中でも特に難しい要素の一つです。「間違った敬語を使うのが怖い」と感じ、会話自体を避ける外国人社員もいます。敬語は日本人であっても苦手意識を持つ人がいるぐらいですから、外国人にとってはさらにハードルが高いと言えます。ビジネス日本語のレッスンでも「敬語を練習したい」というニーズは他の項目に比べ、圧倒的に多く聞かれます。ビジネスで使う言葉に慣れていない日常会話はある程度できても、ビジネスシーンで使われる専門用語や慣用表現には馴染みがないケースが多いです。また、基本的な語彙についても、例えば「始める」だとわかるのに「開始する」だとすぐに反応ができない、といったケースもありえます。こういったことにより、会話についていけず、話すこと自体を避けるようになります。読み書きは勉強したが、話すトレーニングはしてこなかった日本語能力試験(JLPT)は「読む・聞く」能力を測る試験ですが、「話す」力を直接評価する項目はありません。そのため、JLPTで高得点を取得している外国人社員でも、実際の会話となると苦手意識を持つこともよくあります。外国人社員の「話す力」の伸ばし方話しやすい環境を作る外国人社員が安心して日本語を話せる環境を整えることが重要です。たとえば、ランチタイムやミーティングの際に、日本語での雑談を促す工夫をすると、自然な形で会話の機会が増えます。また、「間違えても大丈夫」という雰囲気を作ることで、積極的に話すことができるようになります。業務で使う敬語を特訓する外国人社員が苦手とする敬語を重点的にトレーニングするのも効果的です。具体的には、業務でよく使うフレーズをリストアップし、ロールプレイを取り入れることで、実践的な学習が可能になります。「この場合は、ズバリこう言えば良いのか!」と理解できると、間違いを恐れずに話すことができますし、学んだ表現を早速現場で使ってみよう、と意欲も沸いてくるでしょう。フィードバックのある環境で話す練習をするただ話すだけではなく、適切なフィードバックを受けながら練習する環境を整えることが重要です。おすすめはマンツーマンの日本語レッスン。社員同士だと「コミュニケーション上は不都合がないから」と流してしまいがちな言葉の間違いや発音の不自然さを改善することができます。また外国語を話すときは誰しもが「これで本当にあっているのかな」と不安になるものです。教師から、話している日本語が正しい、とフィードバックをもらえると、自分の日本語力に自信を持てるようになるでしょう。まとめ外国人社員の「話す」力を伸ばすには、単に日本語学習を促すだけではなく、話しやすい職場環境の整備や実践的なトレーニングが不可欠です。企業側の積極的な支援によって、外国人社員が自信を持って日本語が話せるようになり、業務の円滑化やチームの一体感向上に寄与することでしょう。株式会社TCJグローバルでは、即戦力となる外国人材の育成に力を入れています。 日本語教育やビジネスマナー研修を提供し、外国人社員がスムーズに職場に適応できるようサポートします。さらに、日本人社員向けの異文化理解研修を実施し、外国人労働者を円滑に受け入れるための社内体制づくりを支援しています。また、企業様のニーズに応じた人材紹介を行い、外国人社員の定着と活躍を幅広くサポートします。外国人材の採用や定着に関するご相談は、どうぞお気軽にお問い合わせください。<こちらもチェック>外国人社員の日本語力問題!「聞く」力の伸ばし方外国人社員の日本語力問題!「書く」力の伸ばし方著者紹介:福田 祥子(日本語教師・ライター)大手教育系企業で英語講師養成トレーナーとしてキャリアをスタートし、その後広報職に転身。企業内ライターとして新聞コラムや書籍等の執筆を担当。語学好きが高じ、2020年より日本語教師として活動を開始。2022年のスペイン移住後は現地の日本語学校で教鞭を執るほか、TCJプライベート講師や日本語試験問題作成員、執筆業に従事。日本語教師養成講座420時間修了、日本語教育能力検定試験合格。