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外国人社員の日本語力問題!「聞く」力の伸ばし方

外国人社員の日本語力問題!「聞く」力の伸ばし方

国内の労働者不足の影響もあり、外国人社員を採用する企業が増えています。しかし、実際に外国人社員を受け入れてみると、思った以上に日本語能力が不足していることに戸惑う担当者も多いのではないでしょうか。特に業務の遂行に欠かせない「聞く」力が十分でないと、指示を正しく理解できなかったり、業務上のミスやコミュニケーションのすれ違いが発生することも。本記事では、日本語教育の観点から、外国人社員の「聞く」力を向上させるための具体的な方法をご紹介します。

なぜ日本語が聞けない?原因を把握する

スピードについていけない

ある言語学者の研究によると、日本語は1秒あたりに発する音節数が多く、意外にも世界有数の「話すスピードが速い言語」のひとつだそうです。そのため、外国人社員にとって「単語と単語がつながって聞こえる」「区切りがよく分からない」といった問題が発生しやすくなります。

日本語は省略が多い言語である

日本語では、主語や目的語など、文脈で推測できる言葉が省略されることがよくあります。特に会話ではその傾向が顕著です。また「はっきり言わなくてもわかるだろう」という文化的特徴も相まって、外国人社員にとっては想像以上に理解しにくい会話が繰り広げられています。例えば「今送ってください」と言われても、「誰に」「何を」が省略されているため、すぐに反応できないことがあります。

文構造が即座に理解できない

日本語では動詞を最後に置きます。また言葉の修飾でも、修飾部分は前に、言葉そのものは最後に置きます。これは英語などの言語とは全く逆の構造で、外国人社員の母語によっては、理解を困難にしてしまっている要因の一つです。例えば「Aさんが送ったメールをすぐ見てください」という文で、「Aさん」「送る」という言葉にとらわれてしまい、「今、自分がメールを見ることが求められている」と即座に理解できないことがあるのです。

語彙が不足している

「聞く」力は語彙力と密接に関係しています。業務に必要な単語を知らなければ、話の内容を理解することは難しくなります。また業界特有の用語やビジネス用語が頻繁に使われると、外国人社員にとって大きなハードルになります。さらに、わかるだろうと思って使った言葉が和製英語だったということもあります。「アポ」「リスケ」「クレーム」などはその代表格です。

リアルな日本語を聞くトレーニングをしてこなかった

主に読み書き学習を通して日本語を習得してきた外国人社員の場合、文字で見れば理解できるのに、聞き取りだと全く理解できない、ということが往々にして起こります。また、語学学校で勉強してき

た場合でも、語彙レベルやスピードが調整された日本語ばかり聞いてきた外国人社員は、現場で話される日本語がわからない、というケースもあります。

外国人社員の「聞く力」の伸ばし方

気に入った方法で、リアルな日本語をたくさん聞く

日本のアニメやドラマが好きな外国人社員は、比較的リスニング力が高いと感じることはありませんか。聞く力向上のためには、日本語に耳を慣らすことが欠かせません。職場での会話を積極的に聞くことはもちろん、本人が楽しめる方法で日本語のドラマやポッドキャストを聞き、リアルな日本語のインプット量を増やすことが大切です。アニメなどでは、ビジネスに即さない表現も多いですが、あくまでインプット量の確保が目的なので、本人が楽しんで続けられるものを選ぶことが重要です。

語学レベルや業務ニーズに応じた音声教材を聞く

前述した方法と異なり、日本語学習者向けの教材を使ったリスニング学習を並行して行うことも効果的です。素材としては、レベル別のビジネス日本語のテキストがおすすめ。必要な語彙や敬語表現なども効率よく学ぶことができるでしょう。また、教育担当者に余裕があれば、業務や応対のマニュアルなどを肉声で録音し、それを繰り返し聞かせるのも有効です。

シャドーイング練習をする

シャドーイングとは、聞こえた音声をそのまま復唱するトレーニング方法です。声に出して行うため、話す力を伸ばす方法だと思われがちですが、実はリスニング力向上に役立ちます。効果的にシャドーイングを実践するには、聞き取る文章の意味や構造を正しく理解している必要があるので、できれば日本語教師とのレッスンで行うのがおすすめ。日本語特有のリズムやイントネーションに慣れ、母語を介さずに日本語をそのまま理解できるようになるでしょう。

まとめ

外国人社員の「聞く」力を伸ばすことは、一朝一夕にできるものではありませんが、社内外の円滑なコミュニケーションには欠かせないものです。企業の積極的な支援によって、外国人社員のリスニング力が向上すれば、業務のスムーズな遂行にもつながることでしょう。

株式会社TCJグローバルでは、即戦力となる外国人材の育成に力を入れています。 日本語教育やビジネスマナー研修を提供し、外国人社員がスムーズに職場に適応できるようサポートします。さらに、日本人社員向けの異文化理解研修を実施し、外国人労働者を円滑に受け入れるための社内体制づくりを支援しています。また、企業様のニーズに応じた人材紹介を行い、外国人社員の定着と活躍を幅広くサポートします。外国人材の採用や定着に関するご相談は、どうぞお気軽にお問い合わせください。

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著者紹介:福田 祥子(日本語教師・ライター)
大手教育系企業で英語講師養成トレーナーとしてキャリアをスタートし、その後広報職に転身。企業内ライターとして新聞コラムや書籍等の執筆を担当。語学好きが高じ、2020年より日本語教師として活動を開始。2022年のスペイン移住後は現地の日本語学校で教鞭を執るほか、TCJプライベート講師や日本語試験問題作成員、執筆業に従事。日本語教師養成講座420時間修了、日本語教育能力検定試験合格。

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記事を書いた人

外国人材TIME編集部