留学生をアルバイトから正社員に切り替えたい。配属先は飲食フロア、仕事には接客も調理補助も含まれる。技術・人文知識・国際業務で申請を出したところ、「現場業務が主体」と判断され不許可になった——こうした事例は珍しくありません。
在留資格の選び方を間違えると、採用計画が数か月単位で止まります。とりわけ現場業務を含むポジションでは、技人国ではなく「特定活動46号」が適切なケースがあります。
以下では、特定活動46号の取得要件から技人国との判断フロー、業種別のOK/NGライン、不許可を避ける実務対策、申請手続き、採用後の定着支援まで、人事担当者が自社の状況に当てはめて判断できる形で整理します。

監修者
登録日本語教員・国家資格キャリアコンサルタント
徳田 淳子
国際交流基金「EPAに基づく日本語予備教育事業」に日本語教師としてインドネシア派遣。外国人政策情報発信プラットフォーム「にほんごぷらっと」編集広報担当。日本語教育隣接領域における研修を主催する「ことばと学びでつながるなかまの会」「ももの会」創設メンバー。国内MBA取得。
2022年5月 日本語教育学会春季大会 口頭発表
秋田美帆・牛窪隆太・徳田淳子「実習生が抱く『職業としての日本語教師』への不安要素―アンケート調査の結果から―」
2024年 「ことばと公共性―言語教育からことばの活動へー」明石書店(共著)
特定技能の仕組みから採用フロー・受け入れ費用・注意点まで、12ページに凝縮したガイドブックです。制度理解ゼロからでも、採用の全体像と実務的な手順が一気につかめます。
特定活動46号とは?制度の概要と創設背景
特定活動46号は、日本の大学を卒業し高い日本語力を持つ外国人が、現場業務を含む幅広い職種で働ける在留資格です。正式名称は在留資格「特定活動(本邦大学等卒業者)」で、2019年5月に新設されました。
創設の背景には、日本の大学で学んだ留学生が就職先で活かせる在留資格の選択肢が限られていた問題があります。技人国ではデスクワーク中心の業務しか認められず、接客や製造ラインを含む仕事に就きたい留学生の受け皿がありませんでした。
2024年2月には一部改正が施行され、一定の条件を満たす専門学校の卒業者も対象に拡大されています。在留期間は5年・3年・1年・6か月のいずれかで、初回の変更・更新時は原則1年です。更新回数に上限はなく、条件を満たせば永住許可の申請も可能とされています。
特定活動46号の取得要件は?5つの必須条件を一覧で解説
「N1に受かっていれば特定活動46号は取れる」と思われがちですが、N1はあくまで5つの必須条件のうちの1つです。学歴・日本語能力・雇用形態・報酬・業務内容のすべてを満たさなければ許可は下りません。
| 条件 | 内容 | 注意点 |
|---|---|---|
| 学歴 | 日本の大学(学士)・大学院(修士・博士)を卒業 | 海外大学は対象外。2024年改正で認定専門学校(高度専門士)も可 |
| 日本語能力 | JLPT N1合格、またはBJT480点以上 | 日本語学を専攻した場合は試験免除 |
| 雇用形態 | フルタイムの常勤雇用(直接雇用) | パート・アルバイト・派遣は不可 |
| 報酬 | 日本人と同等額以上 | 地域・業種の相場、昇給制度も審査対象 |
| 業務内容 | 日本語を用いた意思疎通が業務に含まれる | 単純労働のみ(清掃・皿洗いだけ等)は不可 |
学歴要件(2024年改正で専門学校も対象に)
対象となる学歴は、日本の4年制大学で学士を取得した場合、大学院で修士・博士を取得した場合のいずれかです。短期大学や高等専門学校の卒業者は、独立行政法人大学改革支援・学位授与機構から学士の学位を授与された場合に限り対象になります。
2024年2月の改正で、専門学校の卒業者も条件付きで対象に加わりました。ただし全専門学校ではなく、文部科学省の「外国人留学生キャリア形成促進プログラム」の認定を受けた学科で高度専門士の称号を取得した場合に限られます。海外の大学は対象外です。
日本語能力要件(N1・BJT480点)
日本語能力試験(JLPT)N1の合格、またはBJTビジネス日本語能力テストで480点以上のスコアが必要です。大学等で日本語学・日本語教育学を専攻して卒業した場合は、試験の合格が免除されます。ただし試験が免除されても、学歴要件の「日本の大学等」を卒業している条件は残ります。
雇用形態・報酬・業務内容の条件
雇用形態はフルタイムの常勤に限られ、パートタイムや派遣は認められません。報酬は日本人と同等額以上で、地域・企業の賃金体系を踏まえて総合的に審査されます。高い語学力を評価して採用した場合は、その能力が報酬に反映されているかも確認対象です。
業務内容については、日本の大学等で修得した知識や能力を用いる業務が含まれていることが求められます。現場業務が主体であっても問題ありませんが、日本語を用いたコミュニケーションが業務に含まれていない場合は対象外です。
技人国と特定活動46号はどちらを選ぶべき?業務内容で決まる判断フロー
「留学生の採用ならまず技人国」と考える企業は多いですが、配属先の仕事に現場業務が含まれるなら、その判断は危険です。技人国と特定活動46号の分水嶺は、業務に現場作業が含まれるかどうかと、日本語での意思疎通が業務に不可欠かどうかの2軸で決まります。
| 比較項目 | 技術・人文知識・国際業務 | 特定活動46号 |
|---|---|---|
| 業務範囲 | 専門性のあるデスクワーク中心 | 現場業務を含む幅広い職種 |
| 学歴要件 | 大学卒または実務経験10年以上 | 日本の大学等を卒業(海外大学は対象外) |
| 日本語要件 | 明確な基準なし | N1またはBJT480点以上(必須) |
| 転職時の手続き | 届出のみ(同一在留資格内) | 在留資格変更許可申請が必要 |
| 家族帯同 | 家族滞在ビザ | 特定活動47号ビザ |
判断フロー:現場業務の有無×日本語使用度で決める
募集ポジションの職務内容を洗い出し、以下の順序で確認します。
- 業務の主軸がデスクワーク(翻訳・マーケティング・SE等)で現場作業が不要 → 技人国を検討
- 現場業務(接客・製造ライン・配膳等)を含み、日本語での意思疎通が業務に不可欠 → 特定活動46号を検討
- 候補者が日本の大学等の卒業者でない、またはN1未取得 → 特定活動46号は対象外。技人国か特定技能を検討
技人国で申請済みの場合でも、業務範囲の変更に伴い特定活動46号への変更申請は可能です。ただし在留資格変更許可申請が必要になるため、配属先の業務内容が固まった段階で判断するほうが手戻りを防げます。
特定技能との違いも押さえる
特定技能は対象16分野の現場業務に特化した在留資格で、学歴要件がなく技能試験と日本語試験(N4以上)で取得できます。一方、特定活動46号は日本の大学卒業とN1が必須で、業種の制限がない代わりに候補者の母数は限られます。採用候補者のプロフィールと配属先の業務を照らし合わせ、どちらが合うかを判断してください。
特定活動46号で従事できる業務・できない業務を業種別に整理
特定活動46号で認められる業務の基準は明快です。日本語を用いたコミュニケーションが業務に含まれていれば、接客・製造ライン・配膳などの現場業務も認められます。逆に、会話が不要な作業だけに従事する場合は対象外です。
| 業種 | 認められる業務例 | 認められない業務例 |
|---|---|---|
| 飲食店 | 店舗管理・通訳を兼ねた接客 | 皿洗いや清掃のみ |
| 小売店 | 仕入れ・商品企画・通訳を兼ねた接客販売 | 商品の陳列や店舗清掃のみ |
| 工場・製造 | 外国語で技能実習生への作業指示・通訳をしつつラインにも入る | 指示されたライン作業のみ |
| 宿泊施設 | 翻訳業務を兼ねた広報・外国人客への通訳案内 | 客室の清掃のみ |
| 介護施設 | 外国人従業員への指導をしながら日本語で介護業務 | 施設内の清掃や洗濯のみ |
| タクシー会社 | 観光企画・通訳を兼ねた観光案内ドライバー | 車両の整備や清掃のみ |
共通するポイントは「日本語を使う業務が含まれているか」です。現場作業が主体であっても、通訳・指導・企画など日本語を使う要素が職務に組み込まれていれば認められます。なお、風俗営業に関わる活動と、医師・弁護士など法律上の資格が必要な業務は対象外です。
採用した外国人材の定着まで見据えた受け入れ体制については、「外国人材の定着を支える4つの仕組み」で詳しくまとめています。
不許可になりやすい3つのケースと具体的な対策
特定活動46号の申請で不許可になる原因は、書類の不備だけではありません。職務内容説明書の記述が曖昧なケース、候補者の留学時代のオーバーワーク、報酬設定のミスの3つが実務上多い不許可パターンです。
不許可パターン:職務内容説明書が「接客」だけで終わっている
よくある状況:
雇用理由書に「接客業務」とだけ書いて申請した結果、日本語使用の具体性が不足と判断され不許可。
回避方法:
- ・ 業務の中で日本語を使う場面を3つ以上列挙する
- ・ 日本語で行う業務の割合を明記する
- ・ 大学での専攻と業務の関連を1文で説明する
留学中のアルバイトが週28時間を超えていた場合、課税証明書の収入額から発覚する可能性があります。面接の段階で「平均どれくらい働いていたか」「掛け持ちはあるか」を確認し、税金の滞納がある場合は申請前に完納しておくことで審査上の懸念を減らせます。
報酬は「一定額以上」という基準ではなく、同じ仕事をする日本人と同等以上かどうかで判断されます。同業他社の報酬水準も参考にされるため、自社の賃金テーブルだけでは足りません。
申請の流れと必要書類:雇用理由書の書き方がカギ
申請中の手続きミスは取り返しがつきません。在留資格変更申請中に候補者が一時帰国し、みなし再入国許可の手続きを怠ったため「単純出国」扱いとなり在留資格が消滅した事例があります。採用計画が白紙に戻り、再度の入国手続きに数か月を要しました。
申請は4種類あります。留学ビザからの変更、海外から呼び寄せる認定、引き続き滞在する更新、すでに日本にいる場合の取得です。審査期間は早ければ2〜4週間、平均2か月、長い場合は3か月です。3〜4月は入管が混雑するため早めの準備が必要です。
雇用理由書の内容が許可率を大きく左右します。雇用側が伝えたいことではなく、入管が知りたい情報を軸に記載するのが鍵です。日本語を用いる業務の具体的な場面、大学での専攻と業務の関連、同等報酬の根拠を盛り込みます。内容が充実した雇用理由書を最初から提出していれば、追加資料を求められる可能性が下がります。
N1人材を採用した後の定着支援:日本語力だけでは足りない理由
日本語で自由に会話できる技能実習生の割合は、わずか3.1%です。N1に合格していても、現場で使われるカタカナ語・オノマトペ・省略語は日本語教育の範囲外であり、試験の日本語と現場の日本語は別物です。「N1だから大丈夫」という前提でOJTを組むと、大半のケースで噛み合いません。
- 業務語彙のすり合わせ: 配属先で使う専門用語・略語・カタカナ語のリストを入社前に共有する
- 報連相のルール明示: 何を・誰に・いつ報告するかを文書化し、口頭指示だけに頼らない
- 定期的な日本語フォローアップ: 入社時研修で終わらせず、3か月・6か月の節目で業務上の日本語課題を確認する
TCJグローバルでは、11か国60機関のネットワークと37年の日本語教育実績をもとに、企業ごとの業務内容に合わせたカスタマイズ日本語教育を提供しています。内定から入社後6か月までの継続支援を設計しているため、N1人材の現場定着を支える体制として活用できます。
特定活動46号に関するよくある質問
Q1. 特定活動46号で転職はできますか?
A. 転職は可能です。ただし特定活動ビザはパスポートの指定書で受入機関が指定されているため、同じ特定活動46号内の転職でも在留資格変更許可申請が必要です。
Q2. 特定活動46号から永住権は取れますか?
A. 更新回数に上限はないため、順調に更新を重ねれば永住者ビザの申請も可能です。永住許可には原則10年以上の在留実績が必要で、納税・社会保険の加入状況も審査されます。
Q3. 家族は帯同できますか?
A. 配偶者または子に限り、「特定活動47号ビザ」で帯同できます。家族滞在ビザと内容は似ていますが、本体が特定活動のため家族も特定活動として管理されます。
Q4. 更新は何回までできますか?
A. 更新回数の上限はありません。初回は原則1年ですが、受入機関の規模や安定性に応じて3年・5年が付与されるケースもあります。
Q5. 特定活動46号と特定技能はどちらが採用しやすいですか?
A. 候補者の条件によります。特定活動46号は日本の大学卒業+N1が必須で母数は限られますが、業種制限がなく更新上限もありません。特定技能は対象16分野でN4以上で取得でき母数は大きい反面、1号は在留期間5年の上限があります。
まとめ:自社の採用ケースに合う在留資格を選ぶために
特定活動46号は、日本の大学を卒業した高い日本語力を持つ人材を、現場業務を含む幅広い職種で採用できる在留資格です。技人国との使い分けは、配属先の業務に現場作業が含まれるかどうかで判断します。
- 1. 職務内容の確認: 日本語を使う業務が含まれているか、業種別パターンに照らして確認する
- 2. 候補者の要件適合: 学歴・日本語能力・雇用形態・報酬の5条件を満たすか確認する
- 3. 雇用理由書の準備: 入管が知りたい情報を軸に、日本語使用の場面と業務の関連を記述する
在留資格の確認方法から受け入れ体制の整備・日本語教育まで、外国人採用に関わるお悩みを一気通貫でサポートします。11か国60機関のネットワークを持つTCJに、まずはお気軽にご相談ください。



