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外国人スタッフが戦力になる職場とは? 採用&育成のポイント~エンジニア編~  

外国人スタッフが戦力になる職場とは? 採用&育成のポイント~エンジニア編~  

国内で外国人エンジニアの採用を検討し始めた企業が、最初にぶつかる壁は「何から手をつければよいか分からない」という点です。在留資格の種類、選考で見るべき技術評価の方法、採用後の日本語研修の整え方——ひとつひとつは別々の問題に見えますが、どれかひとつが欠けると採用全体がうまくいきません。

経済産業省の試算によれば、2030年には国内ITエンジニアが最大79万人不足します。国内採用だけで需要を埋めることは、現実として難しい水準になっています。一方、外国人エンジニアの採用を急いだ結果、在留資格の手続きミスで内定から入社まで半年かかった、入社後に日本語の壁でチームに馴染めず6ヶ月で離職した、という事例も少なくありません。

外国人エンジニア採用で必要になる在留資格確認・採用ルートの選び方・選考の評価方法・採用後の育成と定着施策を一本で整理しています。初めて外国人エンジニアの採用を担当する人事担当者が、採用から定着まで全体像を把握できる内容です。

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監修者 徳田淳子
監修者

登録日本語教員・国家資格キャリアコンサルタント

徳田 淳子

国際交流基金「EPAに基づく日本語予備教育事業」に日本語教師としてインドネシア派遣。外国人政策情報発信プラットフォーム「にほんごぷらっと」編集広報担当。日本語教育隣接領域における研修を主催する「ことばと学びでつながるなかまの会」「ももの会」創設メンバー。国内MBA取得。

外国人エンジニア採用が増える理由

2030年に79万人不足するIT人材の現実

経済産業省が公表した『IT人材の最新動向と将来推計に関する調査結果』では、2030年時点のIT人材不足が最大79万人に達すると試算されています。2020年時点ですでに30万人不足していたとされており、不足幅は拡大の一途です。

新卒採用の競争が激しくなる一方、中途採用市場でも経験豊富なエンジニアの争奪戦が続いています。この状況に対応するため、東南アジア・南アジア出身の外国人エンジニアを採用に加える企業が増えています。即戦力となる若手エンジニアの絶対数が、海外市場のほうが多いためです。

外国人エンジニアを採用するメリット

人材不足の解消だけが採用の目的ではありません。外国人エンジニアを受け入れた企業が実感するメリットは、大きく3つに整理されます。

メリット 具体的な効果
技術力の底上げ インド・東南アジアの理工系大学出身者は、数学・アルゴリズムの基礎教育が充実しており、即戦力となる人材が多い
多言語対応力 海外クライアントとの折衝・グローバル展開の際に、英語や母国語での対応が可能になる
チームの視野拡大 異なる文化的背景を持つメンバーが加わることで、問題解決の見方が広がる

採用前に確認すべき在留資格の種類

外国人エンジニアを採用するには、担当する業務内容に対応した在留資格が必要です。在留資格を確認せずに採用を進めると、内定後に申請できないケースが生じます。エンジニア採用で主に使われる在留資格は3種類です。

在留資格 主な要件 特徴
技術・人文知識・国際業務 大卒以上または実務経験10年以上 最も一般的。システム開発・プログラミング・設計業務に対応
高度専門職 ポイント制(学歴・職歴・年収で70点以上) 複数の就労活動が可能。永住権の取得優遇あり
特定活動46号 日本の4年制大学卒業・日本語N2相当以上 技人国より職種制限が緩く、日本語を活かす業務全般に対応

技術・人文知識・国際業務(技人国)

エンジニア採用でもっとも多く使われる在留資格です。大学・大学院を卒業していること、または業務に関連する分野で10年以上の実務経験があることが基本要件とされています。情報処理技術に関する国家試験に合格している場合は、学歴・職歴の要件が一部免除されます。

標準処理期間は認定申請で1〜3ヶ月とされています。内定から入社まで余裕を見て3ヶ月は確保するほうが現実的です。海外在住の候補者に対しては「在留資格認定証明書」の交付申請が必要となります(出入国在留管理庁の手続き)。

高度専門職

学歴・職歴・年収・日本語能力などをポイント化し、合計70点以上で申請できる在留資格です。ポイントが高い候補者ほど、副業許可や家族の就労許可など、通常の就労ビザにはない優遇措置を受けられます。高いスコアを持つエンジニアを採用する場合は、永住権取得の観点からも候補者側に大きなメリットがある在留資格です。

特定活動46号

日本の4年制大学を卒業した外国人が、日本語能力を活かして幅広い業務で就労できる在留資格です。技人国が「専門的技術業務」に限定されるのに対して、特定活動46号はより業務の幅が広く、日本語を使った業務全般に対応しています。日本語能力はN2相当以上が求められますが、日本の大学で4年間学んだ人材に適した在留資格です。

外国人エンジニアの採用ルート4選

採用ルートの選択は、コスト・スケジュール・候補者の日本語レベルのバランスで決まります。初めての外国人採用で「どのルートが正解か」と悩む場合は、手続き面のサポートが厚い人材紹介会社からスタートするのが現実的です。

採用ルート 費用の目安 特徴
国内の外国人留学生 採用コストは国内採用と同水準 日本語能力が高く、文化適応が早い。在留資格変更手続きが必要
海外在住の人材(直採用) 100〜150万円(渡航費・ビザ申請費含む) 技術力が高い候補者が多い。ビザ申請・引越しサポートが必要
外国人専門の人材紹介会社 理論年収の25〜35%程度 要件に合う候補者を紹介。ビザ手続きのサポートも受けられる
業務委託から正社員採用 業務委託契約分のコスト 実務でのパフォーマンスを確認してから採用できる。ミスマッチが少ない

ただし、ルートを問わず在留資格の確認は必須です。採用確定から入社まで2〜3ヶ月のリードタイムを確保して手続きを進めてください。

N2かN3か?業務内容で決まる日本語レベルの基準

外国人エンジニア採用で最初に迷うのが「どのレベルの日本語能力を求めるか」という点です。N2以上にこだわりすぎると採用母数が著しく減り、N3以上にすると現場での対応に不安が残る——そのどちらも正解ではありません。業務内容を先に整理することが先です。

社内開発メインの職場はN3から採用できる

顧客対応を含まず、チームが英語または英語と日本語の混在環境で動いている職場であれば、N3から採用の視野に入れることが現実的です。コードレビュー・技術的なやり取りを英語で行い、日本語は社内コミュニケーションの補助として使う体制であれば、N3でも業務に入れるケースがあります。

N3から採用する場合は、入社後の日本語研修と職場の受け入れ体制がセットで必要です。採用だけ先行して研修が後回しになると、早期離職のリスクが高まります。

顧客対応を含む職場はN2以上が必要

クライアントとの打ち合わせ・議事録の作成・仕様書の読み込みまで担う場合は、N2以上が必要です。ビジネス文書を読み書きし、会議で主体的に発言するためには、N2水準の語彙力と表現力が求められます。顧客折衝を伴う業務でN3人材を配置した場合、コミュニケーション不全がそのまま契約上のトラブルにつながるリスクがあります。

JLPTスコアだけで判断するリスク

日本語で自由に会話できる外国人労働者は全体の3.1%にとどまるというデータがあります。N3やN4を取得していても、現場でのカタカナ語・オノマトペ・省略語は教育範囲外であり、JLPTのスコアだけでは実務コミュニケーション能力を測れません。

「N2持ちなのに議事録が書けない」「指示が伝わらない」——こうしたミスマッチが採用後に発覚するのは、JLPTスコアを実務日本語能力と同一視したためです。選考段階では、スコアの確認に加えて、口頭でのビジネス会話テストや実務場面の模擬タスクを設けることが重要です

TCJグローバルでは、JLPTスコアに加えて「Can-Doアセスメント」で実務コミュニケーション能力(安全指示の理解・図面の読解・報告書の作成など)を可視化しています。JLPTの級と実際の現場力のギャップを採用前に確認できる仕組みです。

選考で確認すべき3つの評価ポイント

外国人エンジニアの選考では、技術力・日本語能力・文化適応力の3軸を確認します。このうち技術力については、自己申告に頼らず第三者が検証できる形で評価することが重要です。

技術スキルの可視化(GitHubとコーディングテスト)

職務経歴書に書かれた「5年のPython経験」だけでは、実際のコードの質は分かりません。GitHubの公開リポジトリがあれば、コードのスタイル・コメントの書き方・コミット頻度から技術力をある程度判断できます。リポジトリがない場合は、自社で用意したコーディングテスト(LeetCode形式、または実務に即した課題)を設けることが効果的です。

使用技術のバージョン・開発規模・チームの人数・担当範囲を職務経歴書に詳細記載させることも、スキルの解像度を上げるうえで有効です。「開発経験あり」という表現は評価の材料になりません。

チームワーク・文化適応力の確認方法

技術力が高くてもチームに馴染めなければ、早期離職につながります。「意見が対立したときどう動くか」「納期が間に合わないと分かったとき誰にどう相談するか」といったケーススタディ形式の質問で、問題解決の進め方を確認すると判断材料になります。

試用期間を設け、実際の業務でのコミュニケーションを見てから正式採用を判断する方法も、ミスマッチを防ぐうえで現実的な選択肢です。

長期キャリアプランとの一致確認

外国人エンジニアの離職理由として多いのが「キャリアの見通しが立たない」という理由です。選考段階で、企業側のキャリアパス(技術領域の拡大・マネジメント機会・昇進の基準)を明確に伝えることが、定着の前提となります。

「いつか昇格できる」という曖昧な約束より、「入社2年で○○のスキルを習得した場合は△△のポジションを検討する」という具体的な基準を伝えるほうが、長期的な就労意向につながります。

選考での見極め方をさらに詳しく知りたい場合は、「定着する人材を見抜く面接ポイント集(全10ページ・無料)」で、適応力・現場力を面接で確認する質問例と評価軸をまとめています。

日本語研修は内製か外注か?採用後の育成・定着施策5選

現場の一場面:挨拶対応がもたらした「孤立」

毎回「お先に失礼します」と丁寧に挨拶する外国人社員に対し、上司が「毎回言わなくていいよ」と言い続けた。数週間後、その社員は「自分はこの職場に必要ない人間だと感じた」と打ち明けた。

「頑張ってるね、気にせず行ってらっしゃい」という一言を添えるだけで、帰属感は維持できた。受け入れ側が何気なく交わす言葉が、外国人社員の定着を左右するという典型的な事例です。

採用後の育成施策を整えずに「本人が頑張るだろう」と放置すると、早期離職のリスクが高まります。日常会話に必要な日本語の語彙数は約10,000語とされており、英語の3,000語と比較して圧倒的に多い言語です。日本語の習得は自力での限界が早く来るため、入社後のサポート設計が定着率に直結します。

日本語研修の導入(内製か外注かの判断基準)

日本語研修を内製するか外注するかは、社内のリソースで判断します。社内に日本語教育の経験者がいる場合は、内製でも対応可能です。一方、専門リソースがない・採用規模が少ない場合は、外部機関への委託のほうが教育の質と定着率の両面で合理的です。

  • 社内に教育経験者がいる場合: 内製を検討。ただし業界用語・ビジネスマナーをカバーするカリキュラムの設計が必要
  • リソースがない・採用人数が少ない場合: 外部機関への委託が定着とコスト削減の両立につながる

TCJグローバルでは、文部科学省と連携したIT職場向け業界特化型の日本語カリキュラムを運用しています。一般的な日本語学校では扱わない専門用語や現場表現を、入社前・入社後に継続して学べる体制です。採用支援を利用した企業には、入社後6ヶ月間のビジネス日本語動画レッスン(75,000円相当)も用意しています。

多言語対応ドキュメントの整備

技術仕様書・社内規定・オンボーディング資料を英語と日本語で用意することで、入社初期の混乱を防げます。すべてのドキュメントを二言語化する必要はありません。まずオンボーディング資料と日常的に参照する技術ドキュメントから着手するのが現実的です。

定期フィードバックと1on1ミーティング

月1回程度の1on1ミーティングをマネージャーと実施し、業務上の課題とキャリアの方向性を定期的に確認します。「何でも話せる場がある」という安心感が、不満の早期発見と離職防止につながります。「最近どうですか?」という漠然とした問いかけより、「先月の業務で難しかった点は何か」「半年後に何を習得したいか」という具体的な問いのほうが情報が引き出しやすいです。

ビジネスマナー・職場文化研修

報連相・会議でのファシリテーション・上下関係に基づくコミュニケーションは、外国人社員には馴染みのない慣習です。採用直後の研修で扱うことで、誤解や摩擦を減らせます。「なぜそのマナーが必要か」という理由を添えて説明すると、指示として従うだけでなく納得して行動できる状態が生まれます。

リモートワーク環境の整備と情報セキュリティ

外国人エンジニアはリモートワーク志向が強い傾向があります。コミュニケーションツール(Slack・Zoom等)の整備と、情報管理ルールの明文化は欠かせません。特に情報セキュリティポリシー(機密情報の取り扱い・VPNの使用方法など)は、入社時に書面で確認しておく必要があります。

外国人エンジニア採用に関するよくある質問

Q1. 外国人エンジニアの採用に必要な在留資格は何ですか?

A. もっとも一般的なのは「技術・人文知識・国際業務(技人国)」です。大卒以上または業務関連の実務経験10年以上が要件になります。より高度な人材には「高度専門職」、日本の4年制大学卒業者には「特定活動46号」も選択肢です。候補者の学歴・職歴と担当業務を照合してから申請する在留資格を確定してください。

Q2. 外国人エンジニアの採用にかかる費用はどのくらいですか?

A. 採用ルートによって異なります。国内留学生からの採用は国内採用と同水準です。海外在住者を直採用する場合は渡航費・ビザ申請費を含めて100〜150万円程度かかるとされています。人材紹介会社を利用する場合は理論年収の25〜35%が目安です。これに加えて入社後の日本語研修費用(外注の場合)が発生します。

Q3. 日本語能力はどのレベルを求めれば良いですか?

A. 業務内容によって異なります。社内開発メインの職場はN3から採用できる場合があります。顧客対応・議事録作成・仕様書の読み込みを担う職場はN2以上が必要です。ただしJLPTスコアだけで判断するのは危険で、実務コミュニケーション能力は別途確認する必要があります。

Q4. 在留資格の申請はどれくらい時間がかかりますか?

A. 技術・人文知識・国際業務(技人国)の標準処理期間は、認定申請で1〜3ヶ月とされています(出入国在留管理庁の基準)。内定から入社まで少なくとも3ヶ月のリードタイムを確保してください。審査状況によっては処理期間が延びることもあるため、余裕を持って申請することが重要です。

Q5. 採用後に早期離職を防ぐために最も重要なことは何ですか?

A. 入社後の日本語研修と定期的なフィードバックの仕組みを整えることです。採用で終わって育成を後回しにすると、日本語の壁・キャリアの不透明感・職場文化への不適応が重なり離職につながります。入社直後のオンボーディング設計と、月次1on1での課題把握を組み合わせることで、離職リスクを下げられます。

Q6. 外国人エンジニアの技術力はどう評価すれば良いですか?

A. GitHubの公開リポジトリやポートフォリオでコードの質を確認する方法が有効です。リポジトリがない場合はコーディングテストを実施してください。職務経歴書には使用技術のバージョン・担当範囲・開発チームの規模を詳細記載させることで、評価の精度が上がります。「開発経験あり」だけでは評価の材料になりません。

まとめ

外国人エンジニア採用を成功させるには、在留資格の確認・採用ルートの選定・選考での評価方法という採用フェーズと、日本語研修・定期フィードバック・ビジネスマナー研修という育成フェーズを同時に整える必要があります。採用フェーズだけを整えて育成を後回しにすると、早期離職が繰り返されかねません。

最後に、採用担当者が確認すべきことを3点に絞ります。

  • 在留資格の確認: 業務内容と候補者の学歴・職歴を照合し、申請する在留資格を内定前に決める
  • 日本語レベルの基準設定: 顧客対応の有無で必要レベルを決め、JLPTスコアだけでなく実務コミュニケーション能力も選考で確認する
  • 入社後の育成・定着施策: 日本語研修の外注先または内製体制を事前に決め、入社初日から動ける状態にしておく

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記事を書いた人

外国人材TIME編集部