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多国籍チームにありがちなトラブルとその回避策5選

多国籍チームにありがちなトラブルとその回避策5選

外国人社員の採用は、新しい価値観やスキルを組織にもたらしますが、その一方で、文化的な前提の違いから思わぬトラブルが生じることも珍しくありません。この記事では、多国籍チームで頻発しやすいトラブルとその回避策についてわかりやすく解説します。

日本の職場文化、3つのポイント

外国人社員とのトラブルの多くは、スキルや意欲の不足ではなく「文化的な前提の違い」から生じます。そのため、受け入れ側である日本企業が日本の職場文化、また自社の文化をよく理解し、あらかじめ外国人社員に共有することが欠かせません。以下の3つは、日本人にとっては当たり前である、日本の職場文化の大きな特徴です。

ヒエラルキー型の組織

企業によって差はありますが、一般的に日本の企業は、年功序列や役職に応じた上下関係を重視する傾向があります。これは「目上の人を敬う」という文化的価値観に基づいており、報告や相談を行う際の順序や言葉遣いにも影響します。 一方で、欧米諸国を中心としたフラットな組織に慣れた外国人社員にとっては、こうしたヒエラルキーに戸惑いを覚えるケースもあります。序列を明確に伝えること、役職ごとの役割を丁寧に説明することが混乱を避けるカギとなります。

高コンテクスト文化

「高コンテクスト文化」とは、コミュニケーションが文脈や背景に大きく依存する文化を指します。言いかえれば、私たちの文化では、発言の裏にある意図や空気を読むことを重視し、「言わなくてもわかる」を前提にコミュニケーションが成り立っています。しかし、言語を使って明確にコミュニケーションを取る「低コンテクスト文化」の中で生活してきた社員にとっては、日本流の「行間を読むコミュニケーション」が難しいケースがあります。

時間厳守は当たり前

日本のビジネスシーンでは、納期や開始時刻を厳密に守ることが信頼構築の大前提となっています。その一方で、日本人にとってはごく普通の「締切を厳守する」「会議の数分前には着席しておく」といった行動が、当たり前でない文化も存在します。時間感覚が違う国出身の社員からすれば、日本の時間感覚は「柔軟性がない」と映っているかもしれません。時間の捉え方は、実は文化によって大きく異なるのです。

ありがちトラブル5選とその回避策

日本の職場文化の特徴を踏まえた上で、多国籍チームで実際に発生しやすいトラブルとそれらを未然に防ぐための具体的な対応策をご紹介します。

①報・連・相が少ない

私は日本語教師としてビジネス日本語を教えていますが「報連相の文化が自国にない」という学習者の数には驚かされます。日本人にとっては、ビジネスの基本のキである「報告・連絡・相談(報連相)」ですが、外国人社員にとっては決して当たり前ではありません。「報連相は相手の時間を奪うからよくない」「自分の責任で仕事を進めるべきだ」と考える外国人社員もいることを知っておくべきでしょう。

【回避策】
・「報連相」の重要性を研修で説明。
・業務指示をする際には「誰に」「いつ」「どのように」「何を」報連相するかを伝える。
・報連相が少ない、と感じた場合は、その都度伝える。

②行間が読めない

前述の通り、「低コンテクスト文化」出身の社員にとっては、日本人が求める「行間を読んだ上でのコミュニケーション」は非常に困難です。「1から10まで言わないといけないのか…」とがっかりされる方もいらっしゃるかもしれませんが、1から10までクリアに伝えることが当たり前の社員にとっては、日本の企業文化は「指示が不明確」「フィードバックが曖昧」だと映っているかもしれません。多国籍チームでは、日本の当たり前を見直す必要があるでしょう。

【回避策】
・5W1Hを明確にしながら指示をする。
・期待される行動は明文化する。(例:報告は1日1回、午後5時までに行う)
・主語や目的語、語尾などを省略せずに、完全な文で伝える。

③謝罪が少ない

和を重視する日本は、世界有数の「謝罪をする国」です。言い換えれば、外国では日本ほど謝罪しません。外国人社員と一緒に働いていると、「普通はここで、一言謝るべきだろう」という場面で謝罪がなかった、というケースに遭遇しますが、実は文化の違いから生じているかもしれません。謝罪が少ないと「非を認めていない」「反省していない」「頑固だ」「プライドが高い」といったように外国人社員を評価してしまいがちなので、この文化の違いは要注意です。

【回避策】
・日本の謝罪文化を研修で説明。
・「この場面では、日本では謝罪の言葉が必要だ」という場合は、その場で教える。
・日本人社員も外国人社員の文化を知る。

④時間感覚が異なる

日本人が「30分で終わらせます」と言えば、文字通り30分以内に終わらせることを意味しますが、外国人社員は30分という時間の尺度を考えず、「ある程度の時間をかけて終わらせる」の意味で発言していることがあります。また、「すぐやります」と言っても、すぐに取りかかる気配がない、会議の開始時刻にはいつも数分遅れる、といったことも、人によっては頻発しているかもしれません。個人差ももちろんありますが、時間感覚は国によって異なり、日本の当たり前が本人にとっては当たり前でないかもしれません。

【回避策】
・日本の時間感覚を研修で説明。
・納期管理は、その重要性や遅延が与える影響を可視化し、マイルストーンを細かく設定。
・会議の開始時刻などは、具体的に何時何分にその場所にいる必要があるかを伝える。

⑤コミュニケーションがうまく取れない

日本語レベルがどうであれ、外国人社員にとっては日本語が母語でない以上、日本語力の不足に起因するトラブルは、どうしても起こってしまいます。初中級であれば、指示された内容を正しく理解できていない、先輩や上司に対しても馴れ馴れしい言葉を使ってしまう、など、上級であれば適切な敬語表現が使えていない、などはよくあるトラブルです。

【回避策】
・一人一人に応じたビジネス日本語を支援する機会を提供する。
・「やさしい日本語」を使ってコミュニケーションを取る。
・口頭だけで伝えず、ビジュアルや文字を使ったコミュニケーションを心がける。

まとめ

多国籍チームに求められるのは、「日本のやり方に無理に適応させること」ではなく、「文化の違いを前提に、すり合わせと相互調整を行う姿勢」です。そのためには、企業側の文化的な理解力と柔軟な対応、そして日々の丁寧なコミュニケーションが欠かせません。トラブルも学びの一部と捉えながら、違いを活かせるチームづくりを進めていくことが大切です。

株式会社TCJグローバルでは、即戦力となる外国人材の育成に力を入れています。 日本語教育やビジネスマナー研修を提供し、外国人社員がスムーズに職場に適応できるようサポートします。さらに、日本人社員向けの異文化理解研修を実施し、外国人労働者を円滑に受け入れるための社内体制づくりを支援しています。また、企業様のニーズに応じた人材紹介を行い、外国人社員の定着と活躍を幅広くサポートします。外国人材の採用や定着に関するご相談は、どうぞお気軽にお問い合わせください。

著者紹介:福田 祥子(日本語教師・ライター)
大手教育系企業で英語講師養成トレーナーとしてキャリアをスタートし、その後広報職に転身。企業内ライターとして新聞コラムや書籍等の執筆を担当。語学好きが高じ、2020年より日本語教師として活動を開始。2022年のスペイン移住後は現地の日本語学校で教鞭を執るほか、TCJプライベート講師や日本語試験問題作成員、執筆業に従事。日本語教師養成講座420時間修了、日本語教育能力検定試験合格。

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記事を書いた人

外国人材TIME編集部