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海外の働き方の違いとは|外国人材と日本企業で起きる5場面と受け入れ対策

海外の働き方の違いとは|外国人材と日本企業で起きる5場面と受け入れ対策

公開日 2026年3月30日 更新日 2026年3月30日 運営 TCJグローバル

海外の働き方の違いとは、残業の断り方、休暇の申請タイミング、会議での発言姿勢、上司への報告頻度、時間の感覚が、国ごとの法制度と職場文化の前提によって大きく異なることです。この差は個人の性格ではなく、各国が法律で定めた働く権利と慣習に根ざしています。

「昨日なぜ残業しなかったのか」と問えば、外国人社員は「事前に依頼がありませんでした」と返します。双方に悪意はありません。それでも関係がこじれるのは、残業の前提が制度レベルで違うからです。

採用・研修費用50〜80万円以上をかけた人材が3ヶ月で離職する——その原因の多くは、こうした前提の違いを言語化しないまま受け入れた結果です。受け入れ前に5つの論点を書面化した職場では、入社後3ヶ月の摩擦が大きく減っています。

監修者 徳田淳子
監修者

登録日本語教員・国家資格キャリアコンサルタント

徳田 淳子

国際交流基金「EPAに基づく日本語予備教育事業」に日本語教師としてインドネシア派遣。外国人政策情報発信プラットフォーム「にほんごぷらっと」編集広報担当。日本語教育隣接領域における研修を主催する「ことばと学びでつながるなかまの会」「ももの会」創設メンバー。国内MBA取得。

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【誤解されやすい】先に押さえる5つの論点

「残業時間が長いか短いか」だけで働き方を比べても、職場ではほとんど役に立ちません。実際の衝突は、誰が残業を決めるか、休暇をどう申請するか、会議でどう発言するかという運用の前提で起きます。

次の5つが、受け入れ直後にもっとも摩擦が出やすい論点です。これを書面に落とした会社では、文化差を個人の性格のせいにしてしまうケースが大きく減っています。

論点 海外で多い前提 日本企業で誤解されやすい点 先に決めるべきこと
残業 事前合意が必要な追加業務 協力姿勢の一部として当然視する 依頼者・連絡手段・前日通知・断れる条件
休暇 法律で保障された権利の行使 繁忙期は遠慮するのが当然と考える 申請締切・繁忙期の定義・返答期限
会議 意見を出して決める場 沈黙は同意、事前調整が礼儀と捉える 議題の事前共有・決定事項の文書確認
報連相 問題があれば報告(問題なければ不要) 途中経過の共有がないと連絡不足と判断する 報告頻度・相談の線引き・緊急連絡手段
時間感覚 幅のある概念(10分前後は誤差) 5分の遅れでも評価に影響するとする 始業の定義・提出期限の時刻指定の有無

残業 【前提が違う】

当日夕方の残業依頼が珍しくない職場では、外国人社員はその依頼を「急な追加業務」と受け取ります。管理職は「同じチームなら当然の協力」と考えているため、ここで温度差が広がります。

解決策はシンプルです。残業依頼の担当者、連絡手段、前日までの通知、断れる条件を一枚にまとめてください。感情の衝突は、ルールがない場所で起きます。

休暇【「お願い」ではなく「権利の行使」という発想】

年1回の長期休暇を数ヶ月前から計画する文化では、2週間前の申請でも「十分早い」という感覚です。繁忙期を控える空気だけで断ろうとすると、理由が伝わらず不信だけが残ります。

厚生労働省「令和6年就労条件総合調査の概況」によると、2023年の日本の有給休暇取得率は65.3%でした。取得率は上がっていますが、申請しやすさが部署ごとに異なる会社はまだ多いのが実情です。申請締切、繁忙期の定義、承認までの期限を全社で統一するだけで、「あの部署は言いにくい」という不満はかなり減ります。

会議 【発言と沈黙の意味が国によって変わる】

反対意見を会議中にすぐ口にする文化では、沈黙は同意を意味しません。日本側が根回し重視で進めると、率直な発言が攻撃に見えることがあります。逆のパターンもあります——「上司の前で反対しない」文化の社員は、その場で異議を出さず、後から問題が発覚するという形で摩擦が出ます。

「決定事項」「持ち帰り事項」「次のアクション担当者」を会議の終わりに文書で確認する習慣は、どちらの文化でもうまく機能します。会議後に食い違いが残る場合、ほぼ必ずこの手順が抜けています。

報連相 【「都度報告」と「問題があれば報告」の衝突】

自律的に動くことが評価される職場では、こまめな中間報告は「自己管理ができていない」と受け取られることがあります。日本企業では途中経過を共有しないことが「連絡不足」と判断されるため、どちらの側も相手が「おかしい」と感じてしまいます。

報告の頻度、相談のタイミング、緊急時の連絡手段をあらかじめ決めておくと、この解釈の差を小さくできます。TCJの支援現場では、「短い報告文の型」を入社初日に渡すことで、日本語の壁と報連相のズレを同時に縮めた例が複数あります。

時間感覚 【分単位と幅の差が評価基準に直結する】

始業5分前には着席しているのが当然という職場では、2〜3分の遅れでも評価に影響します。幅で運用する文化の人には、この厳しさは最初に説明しないと伝わりません。

「始業は打刻か着席か」「提出期限は当日中か時刻指定か」を明文化すると、遅刻・期限遅れの判断がぶれなくなります。時間感覚の差は、ルールを早く示した職場ほど問題が小さくなります。

制度で見る差——日本・EU・英国・米国

印象論で国を語ると、感情的な反発が起きます。制度の数字を先に置いておくと、「あの人はそういう考え方をする国で育った」ではなく「その国の法律がそうなっている」という話に落とし込めます。

日本——法定と運用の間にある空気の差

法定労働時間は原則1日8時間・週40時間です(厚生労働省FAQ)。36協定により月45時間・年360時間を上限に時間外が認められています。制度の数字は明確ですが、残業への参加姿勢や休暇の申請しやすさは部署の空気によって大きく変わります。外国人社員には、この「数字と運用のギャップ」がなかなか伝わりません。

EU——休息と休暇を先に守る仕組み

European CommissionのWorking Time Directive(2003/88/EC)は、週平均48時間以内の労働時間、6時間を超える勤務時の休憩、24時間ごとに11時間の連続休息、年4週間(28日)以上の有給休暇を全加盟国に義務付けています。休暇の相談が「お願い」ではなく「権利の行使」として受け止められるのは、この制度の前提があるからです。

英国——2024年施行で入社初日から申請できる

GOV.UKによれば、2024年4月施行のFlexible Working (Amendment) Regulations 2023により、従業員は入社初日から柔軟勤務を申請できます。始業・終業の時刻、働く曜日、働く場所が対象です。旧制度は26週間の勤続後から申請可能でしたが、これが変わりました。「入社したばかりだから遠慮するべき」という感覚は、英国では通じません。

米国——FLSAが時間外を追加コストと規定する

U.S. Department of Laborによれば、FLSAの適用を受ける労働者は1週40時間を超えた分に通常賃金の1.5倍以上の残業代が必要です。管理職・専門職など一定要件を満たすexempt workerは適用外となりますが、一般的な現場労働者には適用されます。時間外労働を追加コストとして明確に捉える感覚が強く、依頼の出し方が曖昧だと不信につながります。

地域 法定労働時間 有給休暇の最低保障 時間外・残業の扱い
日本 1日8時間・週40時間 勤続6ヶ月後に10日〜(上限20日)。取得率65.3%(2023年) 36協定で月45時間・年360時間まで。割増率は法定25%以上
EU 週平均48時間以内 年4週間(28日)以上が全加盟国に義務 24時間ごとに11時間の連続休息が義務。上限超えは原則拒否可
英国 週平均48時間以内(Brexit後も維持) 年5.6週間(最低28日) 入社初日から柔軟勤務申請可(2024年4月〜)
米国 連邦法は週40時間を超えると残業代発生 連邦法による有給休暇の最低保障はなし(州・企業規定による) FLSA対象者は週40時間超に1.5倍以上の残業代が必要

出典: 厚生労働省 FAQ / 厚生労働省 令和6年就労条件総合調査 / European Commission Working Time Directive / GOV.UK Flexible working / U.S. Department of Labor FLSA

東南アジア出身社員との摩擦が出やすい3場面

日本で働く外国人の多くは、ベトナム、フィリピン、インドネシア、中国等の出身者です。特定技能・育成就労制度での受け入れが増えているこれらの国には、EU・米国とはまた異なる固有の前提があります。「海外なら欧米流」という思い込みは、現場では通じません。

フィリピン——残業割増125%の法的根拠

フィリピン労働法(Labor Code Article 87)は、1日8時間を超える残業に通常賃金の125%以上の支払いを義務付けています。休日出勤は130%以上が必要です。「チームへの貢献」として時間外を求められると、法的感覚とのズレが生じます。残業を依頼する際は、前日までの連絡と条件の明示が前提になります。フィリピンの労働法にサービス残業という規定はありません。

ベトナム・インドネシア——就業時間の長さと休暇権利意識の同居

ILO統計によれば、ベトナムの年間実労働時間は約2,316時間で、日本(約1,626時間、OECD 2022)を大きく上回ります。インドネシアも約2,018時間です。長時間就業が一般的な環境にいた人でも、法定休暇の権利意識は別に持っています。「長く働ける人だから休暇も返上するはず」という見立ては通じません。

「はい」が同意を意味しない場面がある

東南アジアの多くの職場では、上司の発言に対して正面から反論することは「失礼」とみなされることがあります。「はい」「分かりました」が、完全な理解や同意ではなく、その場の摩擦を避けるための返答であることも珍しくありません。TCJの支援現場では、こうした確認ズレが作業ミスや安全上のインシデントにつながっている例が報告されています。

指示の確認は「どうしますか?」ではなく「どうやりますか?」と手順を聞く形にすると、理解度を直接確かめられます。

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受け入れ前に決めておく4つのルール

文化の違いは、受け入れた後に「慣れてもらう」より、受け入れ前に「自社はこうする」と書面化したほうが早く機能します。日本語が十分に通じない状態でのトラブルは、ルールがないことで起きている場合がほとんどです。

残業・休暇・在宅勤務の条件を一枚に書く

就業規則は条文が長く、現場がすぐに参照できません。入社初日に渡す受け入れルール一枚に、残業依頼の担当者と連絡手段、休暇申請の締切と承認者、在宅勤務の条件と申請窓口を短く書いてください。美しい文書より「誰が説明しても同じ内容になる」ことを優先します。

  • ・ 残業依頼の担当者と連絡手段(当日依頼の可否と通知の締切時刻)
  • ・ 有給休暇の申請期限と承認者(繁忙期の調整手順も含む)
  • ・ 在宅勤務・時差勤務の対象条件と申請窓口

会議と報連相の型を統一する

会議の進行順(議題提示→議論→決定事項と持ち帰り事項の確認→アクション担当者確認)を全社で統一すると、「決まったのか決まっていないのか分からない」という混乱が起きにくくなります。

JLPTの級だけで日本語対応力を判断すると読み違えることがあります。TCJでは、Can-Doアセスメントで実務会話の通じ方を確認し、報告の定型文や緊急連絡の言い回しまで企業ごとに整えています。報告書式・相談の線引き・緊急連絡の順番をあらかじめ決めておくと、文化差と言語差を同時に縮められます。

管理職への文化差インプットを先に行う

本人向けオリエンテーションだけでは不十分です。上司・管理職が、反対意見をどう受け止めるか、休暇相談への返し方、残業依頼の伝え方を知っておくだけで、初期の摩擦は確実に減ります。

研修の目的は国別の豆知識を暗記することではありません。「自社ではこうする」という線引きを管理職全員で統一することです。誰が対応しても同じ説明になる状態が整えば、属人化も防げます。

入社後も続く日本語支援が定着率を変える

入社時研修で終わらせてしまうと、現場で必要な語彙が追いつかず、安全指示や緊急連絡で詰まる場面が出てきます。TCJグローバルでは、業界ごとの現場表現を含む日本語教育と入社後6ヶ月の動画レッスン(無料)を組み合わせています。

働き方の違いは制度だけでなく、言葉の運び方にも表れます。残業の断り方、休暇申請の言い回し、上司への急ぎ相談の表現まで練習しておくと、誤解は大きく減ります。日本語教育37年・育成実績1万人以上のTCJが、受け入れと育成を一貫して支える体制を持っています。

よくある質問

Q1. 海外の働き方の違いはワークライフバランスだけ見れば足りますか。

A. それだけでは足りません。残業の頼み方、休暇の申請、会議での発言、上司への報告頻度、時間感覚まで見ないと、ズレがどこから来ているか分かりません。ワークライフバランスはその結果として出る数字にすぎません。

Q2. 日本の法定労働時間は何時間ですか。

A. 原則1日8時間・週40時間です(厚生労働省FAQ)。36協定により月45時間・年360時間を上限に時間外が認められています。ただし、この数字と実際の現場運用の差は、外国人社員にはなかなか伝わらないことが多いです。

Q3. EUではどれほど休息が守られていますか。

A. EU Working Time Directive(2003/88/EC)は、週平均48時間以内の労働、24時間ごとに11時間の連続休息、年4週間(28日)以上の有給休暇を全加盟国に義務付けています。休暇の相談は権利の行使として受け止められるため、曖昧な拒否は通じません。

Q4. 英国ではいつから柔軟勤務を申請できますか。

A. 2024年4月施行のFlexible Working (Amendment) Regulations 2023により、入社初日から申請できます。勤務時間・曜日・場所が対象です。旧制度は26週間の勤続後から申請可能でしたが、これが変わりました。

Q5. フィリピン出身社員に残業を頼む際の注意点は何ですか。

A. フィリピン労働法(Labor Code Article 87)では、残業に通常賃金の125%以上の支払いが義務付けられています。日本の雇用契約下にあっても、この法的感覚は残っています。前日までの連絡と条件の明示が前提になります。

Q6. 東南アジア出身社員が「はい」と答えても理解しているとは限らないのはなぜですか。

A. 上司への反論を「失礼」とみなす職場文化では、「はい」が理解ではなく摩擦を避けるための返答であることがあります。指示の確認は「どうしますか?」ではなく「どうやりますか?」と手順を聞く形にすると、理解度を直接確かめられます。

Q7. 外国人材の早期離職を防ぐために最初にすべきことは何ですか。

A. 残業・休暇・会議・報連相のルールを書面化し、入社初日に渡すことです。法的な制度の違いを踏まえたうえで、自社はどう運用するかを明示します。これだけで初期の摩擦は大きく減ります。採用・研修費用50〜80万円以上をかけた人材を守るための最初の一手になります。

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