近年、日本国内の労働者不足が深刻化する中で、外国人労働者の採用を検討する企業が増えています。しかし、外国人社員を採用する際には、日本語のコミュニケーション能力を適切に評価し、入社後の成長を支援することが非常に重要です。そのために活用できるのが、日本語能力を客観的に測定する「検定試験」です。本記事では、人事視点で活用しやすい日本語の検定試験について、具体的にご紹介します。
日本語の検定試験の全体像を知る
日本語の検定試験は20種類以上!
日本語の検定試験は、一般的に知られているものから、ビジネスや留学など、専門領域に特化したものまで、20種類以上も存在します。試験ごとに測定するスキルや対象者が異なるため、目的に応じた適切な試験を選ぶことが何より重要です。
(参考)文化庁『⽇本語能⼒評価・試験等⼀覧』https://www.bunka.go.jp/seisaku/kokugonihongo/kyoiku/hyokashiken/
試験の活用目的を明確にする
単に「合格・不合格」を見るだけではなく、目的によって適切な試験を選び、活用することが大切です。人事が試験を活用する目的は、大きく分けて3つに分類できます。
- 採用時に必要なスキルを測る場合 業務遂行に必要な日本語スキル(会話力・読解力・ビジネス日本語など)を確認し、適切な人材を採用するために活用します。
- 入社後の育成目的で活用する場合 入社後の日本語スキル向上の指標として、試験を活用することで、社員の成長を可視化しやすくなります。
- 採用要件として必要な場合 一部の在留資格(特定技能ビザなど)では、日本語能力の証明が求められることがあります。※本記事では詳細について触れません。(参考)出入国在留管理庁 特定技能制度 試験関係https://www.moj.go.jp/isa/applications/ssw/nyuukokukanri01_00135.html
人事目線で比較!おさえるべき4つの試験
数多くある日本語の検定試験の中から、人事目線で外国人社員の採用や育成時に特に役立つ4つの検定試験をピックアップ。各試験を「知名度」「受験がしやすいか」「ビジネスに向いているか」「話す力が測れるか」の観点から比較しました。
※評価は★5つが最大。各評価は個人的な判断によります。
※最新情報は、公式ホームページで必ずご確認ください。
1.日本語能力試験(JLPT)
知名度 :★★★★★
受験しやすさ:★★★★★
ビジネス向き:★★★☆☆
話す力 :★☆☆☆☆ ※試験項目なし
圧倒的な知名度を誇る日本語能力試験。試験は年に2回実施され、学習者の間ではNOKENと略され、日本国内はもちろん、世界各地で受験が可能です。ただし、一般的な日本語力をはかる試験であり、ビジネスに特化した試験ではありません。また、文を書いたり、話したりする能力を測る試験項目は存在せず、採用時の判断材料として使う場合は、企業独自に必要な技能を測る必要があると言えるでしょう。
(公式ホームページ)https://www.jlpt.jp/
2. BJTビジネス日本語能力テスト
知名度 :★★★★☆
受験しやすさ:★★★★☆
ビジネス向き:★★★★★
話す力 :★☆☆☆☆ ※試験項目なし
文字通り、ビジネスで必要な日本語能力を測る試験です。日本ならではの言葉遣いはもちろんのこと、指示された内容を実行する、説明を聞いて判断するといった、ビジネス現場で求められる情報処理能力も測ることができます。また合格・不合格ではなく、スコア評価となるため、入社後の人材育成目的で使用するには使い勝手が良いでしょう。ただし、話したり、書いたりする能力を直接的に測る項目は、BJTにもありません。
(公式ホームページ)https://www.kanken.or.jp/bjt/
3.JPT日本語能力試験
知名度 :★★★☆☆
受験しやすさ:★★★★☆
ビジネス向き:★★★☆☆
話す力 :★☆☆☆☆ ※試験項目なし
最初に述べたJLPTに似た名称ですが、別団体の別の試験です。JLPTに比べ、スコア評価のため、受験する級を選ぶ必要がなく詳細にレベルが把握できること、また、月に1度実施されるため受験機会が多いことは、採用担当者にとってメリットと言えるでしょう。なお、海外での試験は現在はアジア圏に限られています。ただし、JPTにも、話したり、書いたりする能力を直接的に測る項目はありませんので、採用時に使用する場合は、企業独自の試験も必要になるでしょう。
(公式ホームページ)https://www.jptest.jp/
4.J-cert 生活・職能日本語検定
知名度 :★★★☆☆
受験しやすさ:★★☆☆☆
ビジネス向き:★★★☆☆
話す力 :★★★☆☆ ※一部レベルのみ試験項目あり
最大の特徴は、他の試験では測れない最上位レベル(C2レベル)の能力を測る試験が存在することです。マスターコースと呼ばれる最上位レベルの試験では、語彙数や取り扱い漢字数の制限がなく、他のレベルでは実施されていない会話の試験もあり、高いレベルの日本語力を測る必要がある、という採用担当者は検討する価値がありそうです。
(公式ホームページ)https://www.j-cert.org/
<日本語能力の育成や他の検定についても知りたい方はこちらをチェック>
外国人材に関するタグ別記事一覧 | 日本語能力 | TCJ外国人材Times
まとめ
日本語の検定試験は、外国人スタッフの採用時に客観的な指標として活用できるだけでなく、入社後の日本語学習のモチベーション維持にも、大いに役立てることができるでしょう。しかし、試験結果のみで、社員の日本語能力を測ることは、決してできません。企業独自の評価基準やテストと組み合わせ、より実践的な日本語能力を見極めることが重要です。次回以降の記事では、各試験の強みを活かしながら、具体的に人事スタッフができることをご提案したいと思います。
株式会社TCJグローバルでは、即戦力となる外国人材の育成に力を入れています。 日本語教育やビジネスマナー研修を提供し、外国人社員がスムーズに職場に適応できるようサポートします。さらに、日本人社員向けの異文化理解研修を実施し、外国人労働者を円滑に受け入れるための社内体制づくりを支援しています。また、企業様のニーズに応じた人材紹介を行い、外国人社員の定着と活躍を幅広くサポートします。外国人材の採用や定着に関するご相談は、どうぞお気軽にお問い合わせください。
著者紹介:福田 祥子(日本語教師・ライター)
大手教育系企業で英語講師養成トレーナーとしてキャリアをスタートし、その後広報職に転身。企業内ライターとして新聞コラムや書籍等の執筆を担当。語学好きが高じ、2020年より日本語教師として活動を開始。2022年のスペイン移住後は現地の日本語学校で教鞭を執るほか、TCJプライベート講師や日本語試験問題作成員、執筆業に従事。日本語教師養成講座420時間修了、日本語教育能力検定試験合格。