HOME keyboard_arrow_right

在留資格「特定活動46号」を徹底解説。「技術・人文知識・国際業務(技人国)」との違いとは?

在留資格「特定活動46号」を徹底解説。「技術・人文知識・国際業務(技人国)」との違いとは?

在留資格「特定活動46号」は、国内の外国人留学生の7割が就職できていない問題に対し、より柔軟に日本で就労できるように2019年に設けられた比較的新しい在留資格です。この資格は、高度な知識と高い日本語能力を持つ外国人材の活用を促進することを目的としています。本記事では、在留資格「特定活動46号」の概要、必要要件、「技術・人文知識・国際業務」との違いなどを詳しく解説し、企業の人事担当者の皆様に役立つ情報をお届けします。

在留資格「特定活動46号」の概要

外国人労働者の在留資格

在留資格は、外国人が合法的に日本に滞在し、活動することのできる範囲を示したものです。2022年3月現在、29種類の在留資格があります。外国人は活動内容や身分に合わせて、在留資格を変更しながら日本に滞在することになります。外国人を雇用する際は、候補者の在留資格を確認し、その資格で認められている活動範囲内で雇用することが重要です。

「特定活動46号」とは

「特定活動46号」は、これまで外国人留学生が就労できる業種に制限があり、3割程度しか就労できていなかったため、2019年5月に新設された在留資格です。

日本の大学・大学院を卒業し、高い日本語能力を持つ外国人留学生が、習得した知識や応用的能力を活用して幅広い業務に従事することを認める制度です。就業形態は常勤(正社員・契約社員)のみで、日本人従業員と同額以上の報酬が支払われることが必要です。在留期間は、3か月・6か月・1年・3年・5年が与えられ、更新制限もなく、更新し続ければ、将来的に「永住者」の申請も可能です。ただし、原則として、「留学」の在留資格からの変更時は在留期間1年となります。家族の帯同も認められます。

「特定活動46号」の必要な要項

【学歴要件】

  • 日本の大学(院)を卒業
  • 日本語能力試験N1またはビジネス日本語能力テスト480点以上を持っている※日本の大学(院)にて「日本語」を専攻した学生は日本語能力資格不要

【業務要件】

  • フルタイム(正社員・契約社員)での雇用
  • 日本人と同額以上の報酬

※「特定技能」のような特定業種の指定はない
※「技術・人文知識・国際業務」のような在留資格で求められる学部専攻との関連性は必須ではない

具体的な活動例

「特定活動46号」では、日本人と同様に現場経験をさせながら、キャリア形成をする働き方ができます。例えば、以下のような業務全てに対応可能です。ただ、日本語でのコミュニケーションが必要ない単純作業のみの雇用はできません。

  • 企画開発
  • 外国語での商談
  • 日本人や外国人向けの接客
  • 商品陳列、店舗掃除
  • 工場での外国人スタッフ指導
  • 工場でのライン作業

「特定活動46号」雇用のメリット

メリットとしては、下記の点が挙げられます。

  1. 日本語能力と日本文化への深い理解
    「特定活動46号」の対象となる外国人材は、日本の大学や大学院を卒業し、さらにハイレベルな日本語能力資格を有しています。このため、日本の文化や習慣に対する深い理解を持ち、日本語でのコミュニケーションにも十分な経験があります。これにより、職場環境への適応がスムーズで、日本人の同僚とも円滑なコミュニケーションを図りながら、効果的に業務を遂行できると期待されます。
  2. 日本人社員と同等の採用・育成プロセス
    「特定活動46号」の在留資格を持つ外国人材は、日本人の新卒採用と同じタイミングで採用活動を行うことができます。これにより、企業は統一された採用計画を立てやすくなります。また、採用後の労務管理においても、日本の労働関連法規に則った一貫性のある管理が可能となります。さらに、この在留資格は在留期間の更新に制限がないため、企業は長期的な視点で人材育成を行うことができます。将来の幹部候補生として、じっくりとキャリアを積ませながら、組織の中核を担う人材へと育成していくことが可能となります。

在留資格「特定活動46号」と「技術・人文知識・国際業務(技人国)」との比較

外国人留学生の就労に関する二つの在留資格について、その特徴や違いを解説します。職種の範囲、日本語能力要件など、それぞれの資格の特性を比較します。

業務範囲や雇用場所等の違い

「技術・人文知識・国際業務」

  • 大学等で学んだ知識の専門性を活かした業務(関連が必要、単純作業はできない)
  • 派遣社員も可能
  • 条件を満たしていれば副業も可能

「特定活動46号」

  • 日本の大学を卒業し、高い日本語能力を持つ人が、習得した知識を活用して、幅広い業務に従事
  • 常勤(正社員・契約社員)として勤務
  • 副業は認められない

「特定活動46号」では、通訳翻訳業務に従事しながら、現場での作業に従事することも認められています。ただし、日本語でのコミュニケーションが必要ない現場での単純労働のみに従事することはできません。

能力要項の違い

「技術・人文知識・国際業務」

  • 本国または日本の大学・短大・大学院を卒業(学士以上の学位取得、日本の専門学校も含む)
  • もしくは実務経験がある(技術・人文知識分野:10年以上、国際業務分野:3年以上)

「特定活動46号」

  • 日本の大学(院)を卒業
  • 日本語能力試験N1またはビジネス日本語能力テスト480点以上を持っている

「特定活動46号」は日本の大学又は大学院卒業等の学歴や、ハイレベルな日本語能力が求められており、「技術・人文知識・国際業務」よりも厳格な要件となります。

業務内容例

【飲食店】
「特定活動46号」:現場のスタッフの指導教育やシフト管理しながら、ホールスタッフでの接客など現業に従事
「技術・人文知識・国際業務」:基本的には複数店舗の管理者。ホールスタッフなどの現業は研修の一時的なもののみ

【製造業】
「特定活動46号」:日本人スタッフの支持を外国人スタッフに通訳し、自身も製造ラインで作業に従事
「技術・人文知識・国際業務」:通訳翻訳業務。ラインでの作業は不可

「特定活動46号」申請方法

在留資格「特定活動46号」の申請には、複数の書類提出と手続きが必要です。ここでは、申請に必要な書類や手順について概要を説明し、スムーズな申請プロセスのための重要なポイントを紹介します。

申請に必要な書類

特定活動(告示46号)を申請するには、以下の書類を提出する必要があります。

  1. パスポートおよび写真
  2. 在留資格認定証明書交付申請書 1通
  3. 申請人の労働基準法第15条第1項及び同法施行規則第5条に基づき、労働者に交付される労働条件を明示する文書(写し)
  4. 雇用理由書(上記の書類の内容から、日本語を用いた業務等、本制度に該当する業務に従事することが明らかな場合は提出不要。所属機関が作成したものが必要)
  5. 申請人の学歴等を証明する文書
  6. 申請人の日本語能力を証明する文書
  7. 事業内容を明らかにする資料

申請の流れ

  1. 申請書類を用意する
  2. 入国管理局に提出
  3. 入国管理局による審査(通常、1~2ヶ月程度かかる)
  4. 在留資格が許可された場合、許可通知が届く

申請先は、居住地の入国管理局です。申請前に書類が正確であるか、すべての要件を満たしているかを再確認することが重要です。詳細は、法務省「在留資格「特定活動」(本邦大学等卒業者及びその配偶者)」にてご確認ください。

参考:https://www.moj.go.jp/isa/applications/status/designatedactivities11.html

採用時の重要なポイント

  • 取得難易度は高い「技術・人文知識・国際業務」と比較し、学歴と日本語能力が求められる「特定活動46号」は多くの要件をクリアする必要があります。
  • 転職時の手続きの必要性雇用形態は常勤のみで就業場所が指定されます。そのため転職の際には「在留資格変更許可申請」が必要になります。申請せず同じ在留資格での就労はできません。尚、「技術・人文知識・国際業務」の場合は、転職の際、申請は不要です。

まとめ

「特定活動46号」は、日本の大学や大学院を卒業した高度外国人材に対して、より柔軟な就労機会を提供する在留資格です。高い日本語能力と日本文化への理解を持つ人材を採用できるメリットがある一方で、取得要件が厳しいという特徴があります。企業にとっては、即戦力となる外国人材を長期的に育成できる可能性があり、人材不足の解消や多様性の促進に貢献する制度といえるでしょう。

株式会社TCJグローバルは、日本語教育における36年の実績を基に、国内外において日本語教育を軸とした人材育成に取り組んでおります。特にベトナムやネパールをはじめとする海外拠点において、日本語教育と日本語教師養成サービスの運営や日本への就労支援等、様々な活動を展開しております。また、外国人労働者を雇用されている企業様向けに、日本語教育コンサルティングや、ニーズに応じた外国人材のご紹介サービスを提供しております。ご相談やお問い合わせは、どうぞお気軽にご連絡ください。

参考資料:「知識ゼロからの外国人雇用」竹内幸一著

fiber_manual_record

記事を書いた人

外国人材TIME編集部