深刻な人手不足、若手職人の減少、現場の高齢化──。
こうした問題に頭を抱えている建設業界の人事・経営層は少なくないのではないでしょうか。
特に中小規模の建設会社においては、「求人を出しても人が来ない」「技術を継承する人がいない」といった声をよく耳にします。
その中で、今注目されているのが外国人材の活用です。
ただし、「制度が複雑そう」「受け入れに不安がある」「言葉や文化の違いは大丈夫か?」といった懸念から、一歩踏み出せない企業も多いのが現状です。
本記事では、建設業で外国人を採用する際に押さえるべきポイントを、「メリット・デメリット」「採用時の注意点」「育成と定着のための取り組み」に分けて、具体例を交えてわかりやすく解説します。
外国人材を“戦力”として迎え入れ、現場の未来を切り拓くために、今知っておくべき基礎知識と実践のヒントをお届けします。
外国人材を受け入れるメリット・デメリット
日本の建設業界では2023年の時点で約12万人以上の外国人が働いており、10年前と比べて3倍に増加しています。
ここでは、建設業における外国人材受け入れのメリットと注意点を整理します。
【メリット】
・人手不足の解消:若年層の外国人を受け入れることで、慢性的な人材不足の現場を支援できます。
・現場の標準化:教育過程でマニュアル整備が進み、安全管理や業務効率の向上にもつながります。
・職場の活性化:多様な文化背景が刺激となり、現場の雰囲気や社員の意識改革が促進されます。
【デメリット】
・言語や文化の違い:作業指示の誤解や安全意識の差異など、コミュニケーション課題が生まれることがあります。
・支援負担:住居の手配や生活指導、日本語学習支援など、受け入れにあたり一定のコストが発生します。
・定着リスク:キャリアの見通しが示されていないと、孤立や早期離職のリスクが高まります。
採用時に押さえるべきポイントと面接の工夫
外国人材の採用では、単に労働力を確保するという視点ではなく、「現場にフィットする人材か」「長期的に育成可能か」という点を採用時に重視することが大切です。
【注意する点】
・在留資格の確認:特定技能・技能実習・技術・人文知識など、職務内容に合致する在留資格を確認。
・経験の確認:同業種での勤務経験、日本での就労歴があるかどうかを把握。
・支援体制の確認:面接時の通訳や、入社後の支援担当者の配置も事前に検討しておく必要があります。
【面接での質問例】
・これまでどのような仕事をしてきましたか?(経験・スキル)
・なぜ日本、なぜ建設業を選んだのですか?(動機)
・どのくらいの期間、日本で働く予定ですか?(継続意欲)
・日本語でのやりとりで、どんな場面が難しいと感じますか?(語学力・課題)
・困った時は誰に相談したいですか?(サポートへの期待)
スキルの確認に加え、「目的意識」や「継続意欲」があるかを見極めることで、採用の質を高め、定着率の向上にもつながります。
育成・定着のためのポイント
【育成の工夫】
・マニュアル整備:写真や動画、翻訳資料を活用し、視覚的に理解できる教材を準備。
・段階的研修:OJTと座学を併用し、業務ごとのレベルアップをサポート。
・日本語教育支援:業務に必要な言葉を中心に、継続的な学習環境を用意。
【定着支援の取り組み】
・生活支援:住居探し、行政手続き、病院の案内など、生活不安を解消するサポート体制が重要。
・キャリアパスの提示:特定技能から技能ビザへの移行や、施工管理補助など将来像を共有。
・相談窓口:社内に外国人専用の相談担当を配置するなど、孤立を防ぐ仕組みを整備。
・社内交流促進:BBQ、スポーツ大会などを通じて、職場の一体感を育てる工夫も効果的です。
まとめ
建設業における外国人材の活用は、単なる人手不足対策ではなく、現場の構造改革や新たな人材育成の可能性を拓く施策です。
制度の理解、採用の工夫、育成支援、定着への配慮――これらが一体となってこそ、外国人材は真の戦力として現場に貢献します。
「文化が違うから難しい」のではなく、「違うからこそ新しい力になれる」。
その視点こそが、これからの建設現場に求められる新たなスタンダードとなるでしょう。
株式会社TCJグローバルでは、即戦力となる外国人材の育成に力を入れています。
日本語教育やビジネスマナー研修を提供し、外国人社員がスムーズに職場に適応できるようサポート。また、日本人社員向けの異文化理解研修や、企業のニーズに合わせた人材紹介も行っています。外国人材の採用や定着に関するご相談は、どうぞお気軽にお問い合わせください。
著者紹介:平良 園佳(日本語教師)
日本で活躍する外国人向けに、初級からビジネス日本語まで対応したレッスンを通じて、実践的な日本語スキル習得をサポートしている。