深刻な人手不足に直面する中、多くの企業が外国人材の採用に踏み出しています。しかし、雇用に際して見落とせないのが「在留資格」の確認です。
確認を怠れば、不法就労の助長や行政指導といった法的リスクを招くおそれも。
本記事では、採用のどの段階で何を確認すべきか、具体的な実務ポイントをわかりやすく整理し、安全・適法な外国人雇用を実現するための道筋を示します。
【おさらい】外国人採用と在留資格の基本理解

外国人を採用する企業にとって、最初に理解すべきは「在留資格」と雇用の関係性です。在留資格は、外国人が日本国内でどのような活動を行えるかを定めた法的枠組みであり、業務内容と一致していなければ雇用は違法となる可能性があります(要確認: 法務/労務の確認が必要です)。
外国人採用における最重要ポイントは、次の三つです。
- 在留資格の種類ごとの就労可否の違い
- 資格の有効期限と更新の可否
- 就労制限(業種・時間など)の有無
これらを正しく押さえておくことが、企業のリスク回避に直結します。
主な就労可能な在留資格
| 在留資格名称 | 主な対象職種 |
|---|---|
| 技術・人文知識・国際業務 | エンジニア、通訳、マーケティングなど |
| 特定技能(1号・2号) | 介護、建設、農業などの現場職種 |
| 高度専門職 | 研究開発、管理職、高年収技術者など |
| 経営・管理 | 外資系企業の幹部、起業家など |
| 留学(資格外活動許可あり) | 週28時間以内のアルバイト(要許可) |
特定技能は14分野での即戦力確保を目的とした制度で、2024年以降も受け入れ拡大の方針が続いています。
一方、技能実習制度は「人材育成」を建前としながらも、実態は労働力確保であるケースが多く、雇用トラブルや制度見直し議論の対象にもなっています。
雇用前に確認すべき基本観点
- 業務内容と在留資格が適合しているか
- 在留期限が近すぎないか(更新計画があるか)
- 労働時間や職種に制限があるか
これらを把握せずに採用を進めると、不法就労助長罪など法的リスクを負う恐れがあります。
在留資格確認チェックリスト(初期面談用)

| 確認項目 | 確認内容 | メモ欄 |
|---|---|---|
| 在留資格の種類 | 例:技術・人文知識・国際業務 | |
| 就労制限の有無 | 制限あり/なし | |
| 有効期限 | ○年○月○日まで | |
| 資格外活動の許可 | あり/なし |
採用プロセスにおける確認タイミング
在留資格の確認は、採用活動のあらゆる段階で重要ですが、確認のタイミングと方法を誤ると差別的と受け取られるリスクもあるため、慎重な対応が求められます(要確認: 法務/労務の確認が必要です)。
ここでは、採用の3段階(書類選考・面接・内定後)ごとに、具体的な確認ポイントを整理します。
1. 書類選考時
- 履歴書や職務経歴書に在留資格の記載があるかを確認
- 記載がなければ、口頭またはメールで「就労可能な在留資格をお持ちですか」と簡潔に確認
厚生労働省は、国籍などを採否に影響させないよう「在留カード提示は内定後」との配慮を求めています。
2. 面接時
- 応募者の在留資格の種類を確認
- 在留期間の満了日と更新意向について確認
- 就労制限の有無についてヒアリング(例:「週28時間以内」など)
ここでも、カードの提示を求めるのではなく、対話形式で確認することが望ましいとされています。
3. 内定後
- 在留カードのコピーを取得し、記載内容を確認(就労可否・期限など)
- 念のため、原本との照合も実施
- 在留資格が業務と適合していない場合は、内定取り消しの可能性がある旨を事前に伝えておく
※コピー取得時は本人の同意を必ず得る必要があります。
採用段階別 確認フロー表
| 採用段階 | 確認項目 | 注意点 |
|---|---|---|
| 書類選考 | 在留資格の有無 | 書類に記載がなければ口頭で確認 |
| 面接 | 種類・満了日・制限 | 就労制限の表現に配慮 |
| 内定後 | カードコピー取得 | 本人の同意が必須・原本確認も推奨 |
【重要】在留カード確認時の具体ポイント
内定後、在留カードを確認する際は、単に「持っているかどうか」では不十分です。
カードに記載されている各情報を正確に読み取り、雇用条件との適合性を確認することが重要です(要確認: 法務/労務の確認が必要です)。
確認すべき情報項目
在留カードには以下のような情報が記載されています。
- 在留資格の種類(例:「技術・人文知識・国際業務」など)
- 在留期間の満了日(有効期限切れが近い場合は更新可否も確認)
- 就労制限の有無(「就労不可」「就労可」「指定された活動に限る」などの表記)
- 資格外活動許可の有無(例:留学生がアルバイトする場合に必要)
とくに、「資格外活動許可」欄の見落としがトラブルの原因になりやすいため、注意が必要です。
見落としがちな確認ポイント
- 「就労可」とあっても、企業の業種と一致しない業務内容だと不適合になるケースあり
- 「指定された活動に限る」と書かれている場合、具体的な職種指定があるか別紙を確認
- 特定活動ビザなどは就労範囲が個別に設定されているため、行政書士等との連携が必要
偽造防止チェック
偽造された在留カードの流通リスクについても警鐘を鳴らしています。確認時には以下も意識するとよいでしょう。
- カード表面のホログラム加工(光の反射で菱形模様が見える)
- 厚みや材質の異常(コピー用紙などはNG)
- ICチップ付きかどうか(カード裏面にマークあり)
疑わしい場合は、出入国在留管理庁のオンライン真偽確認サービスも利用可能です。
視認性向上:在留カード確認チェックシート
| 確認項目 | 内容 | 対応欄 |
|---|---|---|
| 在留資格 | 技術・人文・国際業務 など | |
| 在留期限 | ○年○月○日まで | |
| 就労制限 | 無/有(内容明記) | |
| 資格外活動許可 | 有/無 | |
| カード真偽 | ホログラム確認/ICマーク |
偽造リスクと本人同意の法的配慮
外国人採用において在留カードを確認する際は、2つの重要な観点があります。
ひとつは「偽造カードによる不法就労リスク」への対策。もうひとつは「本人のプライバシーに配慮した適正な確認方法」です。
どちらも軽視すれば、企業側の責任が問われかねません。
偽造カードの実態と見分け方

一部の応募者が、他人名義や偽造されたカードを使用しているケースも報告されています。企業がこれに気づかず採用した場合、不法就労助長罪に問われるおそれがあります(要確認: 法務/労務の確認が必要です)。
見分け方の例:
- ホログラムが印刷されておらず平坦なカード
- 名前のフォントが不自然、にじみがある
- 在留カード番号が桁数不足
- 裏面のICチップマークがない
不安がある場合は、出入国在留管理庁の「在留カード等番号失効情報照会」システムを活用しましょう。
本人同意と個人情報保護
在留カードのコピー取得や原本照合には、必ず応募者本人の同意が必要です。
企業は「法令上の確認義務」であっても、個人情報保護法の観点から、以下の対応が望まれます。
- 目的を明示:「在留資格の適正確認のため」
- 利用範囲を限定:採用管理以外には使用しない
- 取得方法を記録:紙ベース/スキャンなど
- 保存期間を明記:例:内定辞退時には即破棄
本人同意取得の文章については、以下のテンプレートをお使いください。
「この書類は、貴殿の在留資格を適切に確認するため、在留カードの写しを取得・保管する目的で使用されます。取得した情報は採用管理業務の範囲内でのみ使用し、その他の目的には一切使用いたしません。内容にご同意いただける場合は、下記に署名・日付をご記入ください。」
よくある誤解と実務トラブル事例
在留資格の確認に関しては、一見正しく対応しているように見えても、実際にはルール違反になっているケースが多々あります。
ここでは、現場で起こりがちな誤解やトラブル例を挙げ、企業が注意すべきポイントを整理します。
ケース1:資格の「種類」だけを見て安心する
- 誤解:「技術・人文知識・国際業務」なら何でもOK
- 実態:翻訳・通訳などに限定されている場合、工場現場作業などは適用外
→ 対応策:採用予定の業務内容が在留資格の活動範囲に含まれるか、具体的に照合すること(要確認: 法務/労務の確認が必要です)
ケース2:有効期限を見落とす
- 誤解:在留カードがあるから大丈夫
- 実態:有効期限が切れている/更新中の不許可通知が出ていることもある
→ 対応策:採用時に「有効期限」「更新申請の有無」「結果の通知書コピー」まで確認する
ケース3:留学生アルバイトの労働時間超過
- 誤解:「週28時間以内だから安心」
- 実態:学期中か長期休暇中かで制限が変動する。複数バイトの合算でオーバーしてしまうケースも
→ 対応策:勤務日数・時間・学期区分を明示し、契約書に記載
ケース4:技能実習生への直接雇用切り替え
- 誤解:3年間勤務したから、スムーズに社員登用できる
- 実態:「特定技能」などへの在留資格変更が必要であり、申請が不許可となるケースも
→ 対応策:切り替え要件を事前に専門家と確認し、本人の意思確認・準備期間を確保する
実務トラブル対処早見表
| トラブル例 | 原因 | 防止策 |
|---|---|---|
| 不法就労と判断され罰則 | 資格外の業務を指示 | 採用職務の範囲明記 |
| 留学生の時間超過 | 他社バイトと合算オーバー | 週あたりの上限管理 |
| 資格更新忘れ | 期限管理が曖昧 | カレンダー登録+月次チェック |
TCJの実務サポートと教育連携
外国人材の採用を成功させるためには、在留資格の確認だけでなく、入社後の支援体制や日本語教育の整備も不可欠です。
株式会社TCJグローバルでは、長年の教育実績を活かし、外国人雇用企業向けに実務サポートと教育コンサルティングを提供しています。
TCJの支援内容(企業向け)
- 日本語レベル別教育プログラムの提案(現場ニーズに応じたカスタマイズ対応)
- 特定技能試験合格支援(事前教育+模擬試験の実施)
- 社内コミュニケーション強化研修(指示の受け方/報告の仕方など)
- 管理者向け研修(多文化理解・言語指導のポイント)
教育はすべて現場主導の実務課題ベースで設計されており、即日活用できる内容が中心です。
海外拠点との連携体制
TCJは、ベトナム・ネパールなど複数国に現地法人・パートナー校を有し、以下のようなサービスを提供しています。
- 現地での日本語教育とビザ申請支援
- 企業ニーズに沿った人材の事前育成と推薦
- 内定者へのオンライン事前教育+定着支援
このような仕組みにより、「来日前から定着後まで」一貫した支援が可能となっています。
FAQ(よくある質問)
Q1. 在留カードは採用前に必ず確認しなければなりませんか?
A. 採用前の書類選考や面接段階では、口頭確認が望ましく、在留カードの提示は内定後に行うのが適切です(要確認: 法務/労務の確認が必要です)。
Q2. 留学生のアルバイト採用では、在留資格以外に何を見ればよいですか?
A. 「資格外活動許可」の有無と、学期中か長期休暇中かによって、週の労働時間上限が異なります。詳細な労務管理が必要です。
Q3. 技能実習から特定技能への切り替えは簡単ですか?
A. 実際には要件が多く、本人の能力確認・日本語試験・在留資格変更の審査などが伴います。事前に制度と流れを把握しておくことが大切です。
まとめ
在留資格の確認は、単なる手続きではなく、企業の法令遵守と信頼性を支える土台です。採用の各段階で適切な方法とタイミングで確認を行い、不法就労を未然に防ぐ仕組みを構築することが求められます。
株式会社TCJグローバルでは、外国人材の採用から定着までを支える教育・制度支援を提供しています。特定技能人材の事前教育、送出し、定着支援に関するご相談など、企業の状況に応じたカスタムサポートをご案内しております。
まずはお気軽にご相談ください。