外国人採用では、在留カードを見せてもらっても、その場で働けるか言い切れず判断が止まる場面が少なくありません。
表面の在留資格だけで採用を進めると、資格外活動許可の見落とし、更新申請中カードの誤判定、偽造カードの見逃しにつながります。採用の遅れより先に、法令違反の火種が残りかねません。
厚生労働省と出入国在留管理庁の案内をもとに、在留カード表裏の見方、読取アプリと失効情報照会の使い分け、社内に残す確認記録まで実務順にまとめました。東京中央日本語学院を母体に37年の実績を持つ株式会社TCJグローバルの支援経験も踏まえて構成しています。

監修者
登録日本語教員・国家資格キャリアコンサルタント
徳田 淳子
国際交流基金「EPAに基づく日本語予備教育事業」に日本語教師としてインドネシア派遣。外国人政策情報発信プラットフォーム「にほんごぷらっと」編集広報担当。日本語教育隣接領域における研修を主催する「ことばと学びでつながるなかまの会」「ももの会」創設メンバー。国内MBA取得。
2022年5月 日本語教育学会春季大会 口頭発表
秋田美帆・牛窪隆太・徳田淳子「実習生が抱く『職業としての日本語教師』への不安要素―アンケート調査の結果から―」
2024年 「ことばと公共性―言語教育からことばの活動へー」明石書店(共著)
特定技能の仕組みから採用フロー・受け入れ費用・注意点まで、12ページに凝縮したガイドブックです。制度理解ゼロからでも、採用の全体像と実務的な手順が一気につかめます。
外国人採用で在留資格確認が必要な理由
在留資格確認は採用手続きの補助ではなく、法令順守の入口です。厚生労働省は、外国人を雇用する事業主に対し、在留カードなどで届出事項を確認するよう案内しています。
見落としが起きやすいのは、在留カードを見たかどうかではなく、その仕事に就けるかまで確認したかという点です。面接の場で止める基準が曖昧だと、内定後に手戻りが発生しかねません。
在留資格を確認しないと企業も処罰対象になる
不法就労者を働かせた事業主や採用担当者は、不法就労助長罪の対象になり得ます。厚生労働省の案内では、3年以下の懲役または300万円以下の罰金があり、知らなかったでは済まないという位置づけです。
- 法的リスク:不法就労助長罪の対象になります
- 採用実務への影響:採用停止や行政対応で現場が止まります
- 社内への影響:担当者判断が属人化していた経緯まで問われます
確認すべきなのは在留カードの有無だけではない
採用現場で本当に見るべき項目は、在留カードの有無、就労制限の有無、資格外活動許可、在留期限、予定業務との整合です。とくに留学生、家族滞在、転職者は、カードを持っていてもそのまま働けるとは限りません。
出入国在留管理庁は、在留カード等読取アプリでICチップの情報と券面を照合し、あわせて失効情報照会を使う流れを案内しています。見た目だけで判断を終えないことが基本です。
まず確認すべき在留カードの見方
在留カード確認で迷う担当者は多いのですが、面接の場で見る場所は絞れます。表面で4項目、裏面で2項目を押さえるだけでも判断の精度は大きく変わります。
表面で確認する4項目
法務省の「在留カード及び特別永住者証明書の見方」に沿って見ると、まず押さえる項目は4つです。名前や生年月日の本人照合だけで終えず、就労制限の有無まで確認してください。
| 確認欄 | 何を見るか | 採用判断での意味 |
|---|---|---|
| 氏名・生年月日・顔写真 | 応募書類と一致しているか、本人確認書類として矛盾がないか | まず本人照合ができないと、後の判断がすべて崩れます |
| 在留資格 | 留学、家族滞在、技人国、介護、特定活動などの区分 | そのまま働ける人か、追加確認がいる人かを分けられます |
| 在留期間・満了日 | 入社予定日より前に期限が切れないか | 更新申請が必要な候補者を面接段階で見分けられます |
| 就労制限の有無 | 就労制限なし、在留資格に基づく就労活動のみ可などの表示 | 就労の可否と、職務内容の追加確認がいるかを判断できます |
応募者が特別永住者なら、在留カードではなく特別永住者証明書を確認します。氏名、生年月日、有効期間の確認という流れは同じですが、カードの種類が異なる点は見落とせません。
裏面の資格外活動許可欄は必ず確認する
留学生や家族滞在を採る場合は、裏面の資格外活動許可欄が抜けると判断を誤る原因です。ここに許可の記載がなければ、アルバイトとして働いてもらうことはできません。
資格外活動許可があっても、留学生アルバイトは原則週28時間までです。長期休業期間だけ週40時間まで認められる扱いがありますが、学校の休業日程まで確認してはじめて判断できます。
就労制限の有無の読み方早見表
採用判断を急ぐ場面では、就労制限の有無をどう読むかが分かれ目です。カード表面の文言ごとに、見るべき追加書類は変わります。
| 就労制限の有無 | 代表例 | 採用時の見方 |
|---|---|---|
| 就労制限なし | 永住者、定住者、日本人の配偶者等、永住者の配偶者等 | 原則として職種制限はありません。満了日と本人照合を確認します |
| 在留資格に基づく就労活動のみ可 | 技人国、介護、技能、特定技能など | その在留資格の範囲で予定業務に就けるかを見ます |
| 指定書により指定された就労活動のみ可 | 特定活動 | カードだけでは足りません。指定書原本まで確認します |
| 就労不可 | 留学、家族滞在、文化活動など | 資格外活動許可がなければ働けません |
外国人採用における在留資格確認の全手順
採用現場では、確認の順番が決まっていないことが一番危険です。応募から入社後までを4段階に分けておくと、誰が見ても同じ判断に寄せやすくなります。
| タイミング | 必ずやること | 残す記録 |
|---|---|---|
| 応募・面接時 | 原本提示、本人照合、表裏確認 | 確認日、確認者、面接メモ |
| 内定前 | 就労可否と予定業務の整合確認 | 就労可否判断メモ、追加確認事項 |
| 入社前 | 読取アプリ、失効情報照会、コピー保管 | 照会結果、両面コピー、同意取得メモ |
| 採用後 | 期限管理、資格外活動時間、職務変更確認 | 期限台帳、更新申請控え、職務変更記録 |
応募・面接時は原本確認と本人照合を行う
最初に見るのはコピーではなく原本です。応募書類の氏名、生年月日、顔写真とカード表面が一致しているかを確認し、裏面の資格外活動許可欄までその場で見ます。
この段階では、いまの在留資格でどこまで働けるかを大づかみに分ければ十分です。留学生や家族滞在なら追加確認が要る、技人国や介護なら予定業務との整合を見る、と切り分けておくと内定後の戻りを抑えられます。
内定前は就労可否と業務内容の整合を確認する
ここで見るのは、カードに書かれた在留資格と、実際に任せる仕事が一致しているかです。たとえば技人国なら、カードを持っているだけでどの仕事でもよいわけではなく、学歴や職務内容と結びつく仕事であることが前提になります。
留学生や家族滞在をアルバイト採用するなら、資格外活動許可の有無に加えて、掛け持ち勤務の有無、週の労働時間の見込み、長期休業の扱いまで聞き取りが欠かせません。曖昧なままシフトを作ると、入社後は調整不能です。
入社前は読取アプリと失効情報照会を使い分ける
出入国在留管理庁の在留カード等読取アプリは、ICチップ内の情報を読み、券面の表示と一致するかを確認できます。利用には本人の同意が必要です。面接や入社手続きの場で同意を取り、その場で確認する運用にしておくと抜けません。
失効情報照会は、カード番号が失効していないかを見る仕組みです。ただし、出入国在留管理庁は、失効していない表示だけではカード自体の真偽は判定できないと案内しています。アプリと失効情報照会は役割が別です。
| 確認手段 | 分かること | 注意点 |
|---|---|---|
| 在留カード等読取アプリ | ICチップ内の情報と券面の一致、失効情報照会 | 本人の同意が必要です |
| 失効情報照会 | カード番号が失効扱いかどうか | 偽造カードや更新申請中カードの判断まではできません |
採用後はコピー保管と在留期限管理まで行う
採用時点で終わりにせず、カード両面のコピー、確認日、確認者、入社時点の就労条件を残します。留学生アルバイトなら週の勤務時間、掛け持ちの申告、長期休業期間の確認記録も残す必要があります。
更新期限が近い社員は、満了日の3か月前を目安に一覧化しておくと実務が止まりません。転職者を採ったあとで職務内容が変わる場合も、当初の在留資格で続けられるかを再確認します。
在留資格確認だけでなく、採用フロー全体の整理や支援範囲の比較まで見たい場合は、TCJグローバルのサービス資料にまとめています。
就労可否の判断で迷いやすいケース
判断が割れやすいのは、就労不可の在留資格そのものより、条件付きで働けるケースです。カードの文言と、現場で任せたい仕事の間にずれがないかを見ます。
留学生・家族滞在・特定活動はどこまで働けるか
留学と家族滞在は、カード表面だけ見ると就労不可です。実際に働けるかどうかは、裏面の資格外活動許可と勤務時間の条件まで確認して決めます。特定活動は指定書次第なので、カードだけでは足りません。
| 在留資格 | 採用判断 | 追加で見るもの |
|---|---|---|
| 留学 | 資格外活動許可があればアルバイトは可能です | 週28時間、長期休業、掛け持ち勤務 |
| 家族滞在 | 資格外活動許可があれば条件付きで働けます | 裏面の許可欄、勤務時間、他社就労の有無 |
| 特定活動 | 指定書に書かれた内容の範囲で決まります | 指定書原本、就労条件、在留期限 |
転職者を中途採用するときは就労資格証明書が有効か
出入国在留管理庁の就労資格証明書は、いまの在留資格でどの有償活動に就けるかを説明する文書です。持っていないから採用できないわけではありませんが、転職者の仕事範囲が読み切れない場面では判断材料になります。
たとえば技人国で転職してくる人を現場作業中心の職種に入れるなら、カードだけで内定を出すのは危険です。予定職務と現在の在留資格がずれていないかを見て、迷うなら就労資格証明書の取得や専門家確認を挟みます。
更新申請中の在留カードはどう扱うか
カードに書かれた満了日を過ぎていても、更新や変更の申請を有効期間内に出していれば、結果が出るまで、または満了日から2か月まで引き続き在留できる場合があります。ここは見た目だけで期限切れと判断しやすい箇所です。
- 見るもの:在留カード裏面の申請中表示、受付票や控え
- 面接時の判断:期限切れと即断せず、申請日と申請内容を確認します
- 入社前の記録:裏面コピー、申請控え、結果確認の予定日を残します
偽造カード・失効カードを防ぐ確認方法
偽造対策は、カードの手触りや見た目を覚えることではなく、公式の照会手順を外さないことです。出入国在留管理庁の案内でも、ICチップ確認と失効情報照会を組み合わせる流れが前提になっています。
読取アプリで分かること
読取アプリでは、ICチップ内の氏名、在留資格、在留期間などを読み、券面と一致しているかを確認できます。2025年11月以降は、アプリ経由で失効情報照会も利用対象に加わりました。
面接の最中に使うなら、本人へ確認目的を伝えたうえでスマートフォンにかざしてもらう運用が現実的です。採用担当者が毎回同じ説明をするよう、社内で定型文を決めておくとぶれません。
失効情報照会で分かることと限界
失効情報照会は、カード番号が失効しているかどうかを見る仕組みです。紛失、盗難、失効済みカードの再利用を見つけるには有効ですが、カード番号が有効なら偽造ではないとまでは言えません。
出入国在留管理庁は、更新申請中カードなどでは失効していませんと出る場合があることも案内しています。照会結果だけで採用可否を決めず、カード現物、アプリ結果、申請控えまで合わせて確認してください。
不自然なカードを見つけたときの対応
券面とICチップ情報が一致しない、本人説明と在留資格の整合が取れない、指定書の内容が曖昧といった場合は、その場で採用判断を止めるべき場面です。候補者に事情説明をしたうえで、最寄りの出入国在留管理局、ハローワーク、労働局に確認する流れへ切り替えます。
採用を急ぐ場面ほど、曖昧なまま入社日を決めないことが肝心です。ひとつでも矛盾が残ったら、書類を持ち帰って確認する運用に寄せたほうが事故を防げます。
不法就労を防ぐ社内チェック体制
不法就労防止は、採用担当者の勘に任せる仕事ではありません。面接、内定、入社後管理の記録を残し、迷ったときに止める基準を決めておくと、社内説明まで一貫します。
採用時に残すべきチェックリスト
- 原本確認日:いつ、誰が、どこでカードを見たか
- 本人照合結果:氏名、生年月日、顔写真の一致
- 就労可否判断:予定業務との整合、追加確認の有無
- アプリ照会結果:実施日、実施者、本人同意の有無
- 失効情報照会結果:確認日と確認結果
- 保管書類:在留カード両面コピー、指定書、申請控え
更新期限・資格外活動・職務変更の管理ルール
採用後に崩れやすいのは、更新期限の放置、留学生の時間管理、転職後の職務変更です。採用台帳とは別に、在留期限と就労条件だけを抜き出した一覧を持つと、月次確認の対象が明確です。
| 管理項目 | 確認頻度 | 社内で残すもの |
|---|---|---|
| 在留期限 | 毎月 | 満了日一覧、更新申請予定日 |
| 資格外活動時間 | 毎週 | シフト表、掛け持ち申告書 |
| 職務変更 | 異動前 | 新旧職務内容、確認記録 |
迷ったらどこで止めて誰に確認するか
採用担当者だけで決め切れない場面では、止める基準を社内で明文化しておく必要があります。カード表記と職務内容が噛み合わない、指定書が読めない、更新申請中の根拠書類が出ないといった場面では、内定確定を止めて確認に回します。
自社だけで追い切れないケースでは、在留資格確認、ビザ手続き、入社後の期限管理まで一つの窓口で見られる支援先に寄せたほうが運用がぶれません。TCJグローバルでは、確認実務と日本語支援を分けずに見ているため、法的に働けるかと現場で働けるかの両方を相談できます。
よくある質問
Q1. 在留カードのコピーだけで採用判断してよいですか?
原本確認が先です。コピーだけでは券面の違和感や裏面の資格外活動許可欄を見落としやすく、ICチップ確認もできません。面接か入社前手続きで原本を確認し、その後に両面コピーを残します。
Q2. 満了日を過ぎたカードはすべて期限切れですか?
更新申請中なら期限切れと限りません。出入国在留管理庁は、有効期間内に申請していれば結果が出るまで、または満了日から2か月まで在留できる場合があると案内しています。裏面表示と申請控えを確認します。
Q3. 就労資格証明書は必須ですか?
必須ではありません。持っていないから採用不可とは言えません。ただし、転職者の職務範囲が読みにくい場面では、就労資格証明書があると会社側の判断材料になります。
Q4. 読取アプリは本人の同意なしで使えますか?
使えません。出入国在留管理庁の案内では、在留カード等読取アプリの利用には本人の同意が必要です。確認目的を伝えたうえで、その場で同意を取り、実施日を記録します。
Q5. 留学生アルバイトは何時間まで働けますか?
原則週28時間までです。学校が定める長期休業期間だけ週40時間まで働ける扱いがあります。掛け持ち勤務がある場合は合算で見ます。
Q6. 失効情報照会で問題がなければ採用してよいですか?
それだけでは足りません。失効情報照会はカード番号の失効有無を見る仕組みで、偽造カードかどうかまでは判定できません。原本確認、ICチップ照合、就労条件の確認を合わせて見ます。
まとめ
外国人採用で見るべき順番は、原本確認、表裏確認、就労可否判断、アプリ照会、採用後管理です。どれか一つでも抜けると、採用時は通っても入社後に問題が出ます。
迷いやすいのは、留学生、家族滞在、特定活動、転職者、更新申請中カードです。カードの見た目だけで結論を出さず、追加書類と予定業務まで合わせて確認することが欠かせません。
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