特定技能1号で採用した外国人材が、あと2年で在留期限を迎える。そう気づいた企業の担当者から、「試験があるとは聞いたが、何をどう準備すればいいのかまったくわからない」という声をよく聞きます。
特定技能2号は、1号との違いや移行要件を知らないままでは準備が間に合わないことも多い制度です。在留期限が切れてしまえば、採用・育成にかけてきたコストが一度ゼロになる。そのリスクが現実になっている企業は少なくありません。
特定技能2号の制度の全体像から対象11分野の一覧、移行に必要な試験と実務経験の要件、企業側の手続きと義務の変化、そして今日から動けるロードマップまでを順番に整理します。37年間にわたり外国人材の日本語教育を手がけてきたTCJの知見も交えながら、ビギナー向けにまとめた内容です。
特定技能2号とは?1号との違いを比較表でゼロから理解
特定技能2号は、特定技能1号より高い技能水準を持つ外国人に付与される在留資格です。
1号と最も大きく異なるのは在留期間の上限がない点で、更新を続ければ日本で働き続けられます。出入国在留管理庁の制度定義によると、1号が「相当程度の知識又は経験」を必要とするのに対し、2号は「熟練した技能」が求められる制度です。
1号と2号の主な違いを、次の表にまとめました。
| 比較項目 | 特定技能1号 | 特定技能2号 |
|---|---|---|
| 在留期間 | 通算最長5年(更新上限あり) | 更新回数制限なし(実質無期限) |
| 家族帯同 | 原則不可 | 配偶者・子の帯同が可能 |
| 企業の支援計画 | 策定・実施が義務 | 義務なし |
| 技能水準 | 相当程度の知識・経験 | 熟練した技能(監督者レベル) |
| 日本語試験 | あり(日本語能力試験等) | なし(分野別技能試験のみ) |
| 永住権への道 | 在留上限があるため難しい | 継続在留から永住要件を満たせる可能性あり |
企業側にとって特に注目すべきは、支援計画の義務がなくなる点です。
1号では登録支援機関を通じた支援計画の策定・実施が求められるため費用と手間が発生しますが、2号に移行すればその負担はなくなります。長期雇用と運用コストの削減が同時に得られるのが2号の実質的なメリットといえます。
特定技能2号の対象11分野一覧(介護が対象外の理由も解説)
2023年6月9日の閣議決定を経て、特定技能2号の対象分野は従来の2分野から11分野へと大幅に広がりました。現在、以下の分野が対象です。
- ① ビルクリーニング
- ② 工業製品製造業(旧:素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業)
- ③ 建設
- ④ 造船・舶用工業
- ⑤ 自動車整備
- ⑥ 航空
- ⑦ 宿泊
- ⑧ 農業
- ⑨ 漁業
- ⑩ 飲食料品製造業
- ⑪ 外食業
介護が対象外の理由
介護分野には在留資格「介護」という独立した制度があります。「介護」ビザは更新を続ければ無期限で就労継続できるため、特定技能2号での対応が不要という整理です。介護分野で長期雇用を目指す場合は、在留資格「介護」への変更を検討するのが正しい選択肢です。
製造業・建設・飲食・宿泊など現場系業種を中心に対象が広がっているため、多くの中小企業で自社の外国人材を2号に移行させられる道が開いています。
特定技能2号への移行要件|試験と実務経験の2条件
特定技能2号に移行するには、大きく2つの要件を満たす必要があります。
一つは分野別の技能評価試験への合格、もう一つは監督者としての実務経験です。どちらか一方では申請できないため、試験対策と実務経験の蓄積は並行して進める必要があります。
分野別技能試験とは?CBT化で受けやすくなった背景
各分野を管轄する省庁や業界団体が実施する「特定技能2号評価試験」に合格することが最初の関門です。試験の内容は分野ごとに異なりますが、現場での熟練した技能を測ることが共通した目的です。難易度は1号試験より高く、監督者として業務を統括できる水準が求められます。
2026年度からは多くの分野でCBT(Computer Based Testing)方式への移行が予定されており、試験会場が従来の数か所から全国数十か所以上に拡大されます。受験の機会が増えることで、遠方の企業も計画的に準備を進めやすくなるでしょう。
「監督者としての実務経験」とは何を指すのか
「監督者として複数の部下を指導・管理しながら業務を遂行してきた経験」が必要です。ただし単に年数を重ねればよいわけではなく、部下への指示や業務管理の実態が伴っていることが求められます。分野によって要件の詳細が異なりますが、たとえば建設分野では1年(215日)以上、ビルクリーニングでは2年以上の監督者経験が目安とされています。
企業側が準備できること
外国人材が監督者経験を積めるよう、入社後から意識的に役割を与えることが重要です。業務日報や指示記録などを残しておくと、後から経験を証明する書類として役立ちます。
企業側の手続きと義務|1号から何が変わるか
特定技能1号から2号への移行は「在留資格変更許可申請」として出入国在留管理局に申請します。1号在留中に条件を満たした段階で申請でき、申請者本人または会社、または行政書士に委任する形が一般的です。
手続きの大きな流れを、以下の5ステップで整理しました。
- Step 1 分野別技能試験に合格する(受験申込は企業が代行する分野が多い)
- Step 2 監督者としての実務経験証明書類を揃える(業務記録・在職証明など)
- Step 3 申請書類を作成する(在留資格変更許可申請書、雇用契約書写し、事業所要件確認書類等)
- Step 4 管轄の地方出入国在留管理局に申請を提出する
- Step 5 審査後に新しい在留カードを受領する
1号で義務だった支援計画は2号では不要です。登録支援機関への依頼も義務ではなくなるため、運用コストを削減できます。ただし義務がなくなるからといって放置するのは禁物で、日本語支援や生活サポートを社内で継続することが定着率を左右します。
今から始める2号移行ロードマップ|企業が準備すべき3ステップ
2号移行を成功させた企業に共通するのは、「在留期限が近づいてから動き始めるのではなく、1〜2年前から計画的に準備している」ことです。試験対策と実務経験の蓄積には時間がかかるため、今日から着手することが最大のリスク回避策といえます。
- ステップ1:現状確認(今すぐ)
雇用中の特定技能1号外国人の在留期限・残り期間を全員分把握する。対象分野かどうかも同時に確認する。 - ステップ2:環境整備(今日〜6ヶ月)
本人が監督者経験を積める業務を割り当て、指示・管理の記録を残す仕組みを作る。日本語力が不足している場合は試験対策と並行して研修を手配する。 - ステップ3:試験・申請(移行予定の6〜12ヶ月前)
分野別技能試験の日程を確認し、受験申込を行う。合格後に書類を揃えて在留資格変更許可申請を提出する。
移行に失敗した企業の典型パターン
よくある状況
在留期限まで半年を切ってから「2号移行できないか」と調べ始めた。
原因
試験日程が分野によっては年1〜2回しかなく、申込締切を逃していました。また監督者経験の証明書類が揃っておらず、申請要件を満たせなかった企業も複数あります。
防ぐには
- ・ 雇用開始と同時に2号移行を前提とした育成計画を立てる
- ・ 試験年間スケジュールを早期に確認し社内カレンダーに登録する
- ・ 監督者経験の記録を日常業務の中で継続的に残す
2号移行後も「定着」まで設計することが長期雇用の鍵です。外国人材の離職を防ぐ4つの仕組みについては、「外国人材の定着を支える4つの仕組み」無料ガイドでまとめています。
日本語研修が2号移行成功のカギになる理由
競合記事が触れていない視点として、日本語力が2号移行の実質的なハードルになるケースがあります。
分野別技能試験には日本語試験は含まれていませんが、試験問題は日本語で出題される点も見落とせないでしょう。業務専門語彙の理解が不十分なまま受験しても合格は難しく、試験対策と並行した日本語研修が合格率を左右します。
TCJは37年間にわたり外国人材の日本語教育を手がけており、製造・建設・飲食料品など業種ごとの専門語彙と現場用語を盛り込んだカリキュラムを持っています。2号試験に頻出する指示語・監督者として使う表現・報告書の読み方など、現場で即使える日本語力の育成が得意です。
- 業種特化カリキュラム:製造・建設・飲食料品など分野別の専門語彙と業務語を体系的に習得
- Can-Doアセスメント:現場で実際に使える日本語力かどうかを定量評価し、学習計画に反映
- 6ヶ月無料動画レッスン:入社後の継続学習をeラーニングでサポート(75,000円相当)
2号取得後のキャリアパス|永住権・家族帯同の可能性
特定技能2号を取得した後の最大のメリットは、日本での長期在留の道が現実的に開かれることです。在留を継続しながら永住要件を積み重ねることができ、令和7年10月改定の「永住許可に関するガイドライン(出入国在留管理庁)」のもとで永住申請を目指せる可能性があります。
家族帯同のルールも、1号と2号では大きく異なる点の一つです。2号では配偶者と子を日本に呼び寄せることができるため、本人の生活基盤が安定し、長期的な定着率が高まる傾向があります。一方1号では家族帯同が原則認められていないため、「日本に家族を連れてきたい」という外国人材にとって2号取得は切実な目標です。
企業側から見れば、家族帯同を見通せる2号は採用・育成への投資を長期で回収できる体制を作ることでもあります。5年で帰国させるしかなかった1号と比べ、中核人材として長く働いてもらえる可能性が広がるでしょう。
まとめ
特定技能2号は、在留更新無制限・家族帯同可・支援計画義務なしという3つの点で1号を大幅に上回る制度です。2023年6月の拡大で対象は11分野に広がり、多くの中小企業でも自社の外国人材を2号に移行させる道が開かれています。
移行に必要なのは分野別技能試験の合格と監督者としての実務経験の2条件です。どちらも準備に時間がかかるため、在留期限を見ながら1〜2年前から計画的に動き始めることが重要です。企業側の申請手続き自体は1号よりシンプルになりますが、試験対策と経験の記録を日常業務の中で積み上げておく必要があります。
「試験があるとは知っていたが何もわからなかった」という段階から、今日の行動計画まで整理できたなら、次は雇用中の外国人材の在留期限確認と試験日程の把握から始めましょう。その一歩が、5年後の人材損失を防ぎます。
よくある質問
Q1. 特定技能2号は今からでも取得できますか?
A. はい。現在特定技能1号で在留中の外国人が、分野別技能試験に合格し監督者としての実務経験を積んでいれば在留資格変更の申請ができます。準備に時間がかかるため、早めに計画を立てることをお勧めします。
Q2. 介護業界は特定技能2号の対象ですか?
A. 介護分野は特定技能2号の対象外です。介護分野には在留資格「介護」という独立した制度があり、更新を続ければ無期限で就労継続できるため、2号での対応が不要という整理になっています。
Q3. 特定技能2号では日本語試験が不要と聞きましたが本当ですか?
A. 在留資格申請の要件としての日本語試験は不要です。ただし分野別技能試験は日本語で出題されるため、業務専門語彙の日本語力がなければ試験合格は難しいです。日本語研修と並行して準備することを強くお勧めします。
Q4. 企業側の費用はどのくらいかかりますか?
A. 主な費用は試験受験料、在留資格変更の申請手数料(収入印紙代)、行政書士に依頼する場合の代行費用です。1号と比べて登録支援機関への支援費用が不要になるため、トータルの運用コストは低くなる場合が多いです。具体的な費用は分野や依頼先によって異なるため、専門家への個別相談をお勧めします。
Q5. 技能実習生が特定技能2号に直接移行することはできますか?
A. 技能実習から直接特定技能2号に移行することはできません。まず特定技能1号を取得し、その後に2号への移行要件を満たす必要があります。ただし技能実習修了者は一部の分野で特定技能1号の試験が免除されるため、早期に1号を取得するうえで有利な立場です。
Q6. 特定技能2号を持つ外国人は永住権を取れますか?
A. 不可能ではありません。永住許可には原則10年以上の在留など複数の要件がありますが、特定技能2号は在留上限がないため、継続在留の実績を積める在留資格です。令和7年10月改定の永住許可ガイドライン(出入国在留管理庁)を参照しながら、個別の状況に応じて専門家と確認することをお勧めします。
Q7. 特定技能2号の試験に落ちたらどうなりますか?
A. 試験に不合格でも、その時点での1号在留資格はそのまま有効です。試験は再受験できますが、日程が年1〜2回しかない分野もあるため、在留期限との兼ね合いに注意が必要です。不合格になった場合でも、1号の在留期限内に申請が間に合わない場合は「特定技能関係の特定活動」という在留形式で引き続き在留できる制度があります(出入国在留管理庁)。


