外国人労働者を雇用する際、日本の労働法と在留資格の関係を正しく理解することが重要です。本記事では、外国人雇用に関する基本ルール、在留資格ごとの労働条件の違い、企業の義務やリスクについて解説します。適法な雇用を実現し、外国人労働者と企業の双方にとってメリットのある環境を整えるためのポイントを詳しく説明します。
外国人労働者を雇用する際の基本ルール
在留資格と労働法の関係
外国人が日本で働くためには「在留資格」が必要です。在留資格とは、外国人が日本に滞在し、活動するために必要な許可のことを指します。特に、企業が外国人を雇用する際は、対象者の在留資格が就労可能なものであるかどうかを必ず確認しなければなりません。
日本の労働法は基本的に外国人労働者にも適用されますが、在留資格によって就労可能な職種や活動範囲が制限されているため、適法な雇用を行うには事前のチェックが不可欠です。違反した場合、企業側にも罰則が科される可能性があるため、十分な注意が必要です。
外国人雇用に適用される労働法
日本で働く外国人にも、日本人と同じ労働法が適用されます。主な法律として以下のものがあります。
- 労働基準法:労働時間、休憩、休日、賃金などの最低基準を定めた法律。
- 最低賃金法:地域ごとの最低賃金が適用され、外国人も例外なく対象となる。
- 労働契約法:雇用契約に関する基本ルールを定めた法律。
- 出入国管理及び難民認定法(入管法):外国人の在留資格に関する法律。
企業はこれらの法律を遵守し、外国人労働者にも適切な労働環境を提供することが求められます。
在留資格別にみる労働条件の違い
就労が認められる主な在留資格
外国人が日本で働くために取得できる在留資格には、以下のようなものがあります。
- 技術・人文知識・国際業務:エンジニア、通訳、マーケティングなど専門職向け。
- 特定技能:特定の産業分野(介護、外食、建設など)で人材不足を補うための資格。
- 高度専門職:高度な知識やスキルを持つ外国人向けで、特典が多い。
💡豆知識:高度専門職の特典
「高度専門職」は、日本が優秀な外国人材を積極的に受け入れるために設けた在留資格で、他の在留資格と比較して多くの特典があります。
- 永住申請の優遇:高度専門職のポイント制(学歴・職歴・年収など)で一定基準を満たすと、最短1年で永住許可の申請が可能。
- 複数の活動の許可:1つの在留資格で認められた業務以外にも、複数の職種にまたがる活動が許可される。
- 配偶者の就労制限緩和:配偶者も制限なく就労が可能(通常の就労ビザでは制限がある)。
- 親の帯同が可能:高度専門職者が育児や介護のために、自国の親を日本に呼び寄せることができる。
- 家事使用人の帯同:一定の条件を満たせば、外国人の家事使用人を日本に帯同できる。
- 5年の在留期間:通常の在留資格では1年・3年などの期間が設定されるが、高度専門職は最長5年の在留が許可される。
技能実習と労働法の特殊性
技能実習制度は、発展途上国の人材育成を目的とした制度であり、他の在留資格と異なります。企業が技能実習生を受け入れる場合、以下の点に注意する必要があります。
- 技能実習生は労働者として扱われるため、労働基準法の適用を受ける。
- 最低賃金、労働時間、労災保険など、日本人と同様の待遇を確保する必要がある。
- 技能実習生の受け入れには、監理団体を通じた適正な手続きが必要。
適切な管理を行わなければ、企業側が法的責任を問われる可能性があります。
まとめ:適切な労務管理で外国人雇用を成功させる
外国人労働者を適法に雇用するためには、在留資格と労働法の関係を正しく理解し、適切な手続きを行うことが不可欠です。
適正な労務管理を実施することで、企業にとっても外国人労働者にとっても安心して働ける環境を整えることができます。この機会に、自社の外国人雇用の体制を見直し、より適切な雇用管理を進めていきましょう。
株式会社TCJグローバルは、日本語教育における36年の実績を基に、国内外において日本語教育を軸とした人材育成に取り組んでおります。特にベトナムやネパールをはじめとする海外拠点において、日本語教育と日本語教師養成サービスの運営や日本への就労支援等、様々な活動を展開しております。また、外国人労働者を雇用されている企業様向けに、日本語教育コンサルティングや、ニーズに応じた外国人材のご紹介サービスを提供しております。ご相談やお問い合わせは、どうぞお気軽にご連絡ください。
著者紹介:田嶋由樹(人事職・ライター)
人材業界を経てグローバル企業での人事職を経験