現場で伝達ミスが続き、入社して数か月の外国人社員から辞めたい気配が見えたとき、原因を本人の日本語力だけに寄せると打ち手が遅れます。外国人定着は、仕事の指示、相談のしやすさ、評価の返し方が一続きになっているかで大きく変わります。
厚生労働省が2025年1月31日に公表した外国人雇用状況では、外国人労働者数は230万2587人でした。受け入れが広がる一方で、厚生労働省の2025年公表資料では、日本語能力などが理由で意思疎通を取りにくいと答えた事業所が43.9%でした。
読むと、外国人本人が会社に求める支援の優先順位、定着を左右する3つのすれ違い、すぐ動かせる改善策7つ、入社前から90日までの進め方がつかめます。特定技能で外せない支援と、会社ごとに厚くしたい支援も切り分けて確認しやすい状態です。
外国人定着で先に見るべきコミュニケーション課題
外国人定着を考えるときは、まず本人が求める支援と、会社側が詰まりやすい場面を同じ画面で見ることが重要です。片方だけを見ると、打ち手がずれたまま増えていきます。
外国人本人が必要だと感じる支援は言語・仕事・公平な扱い
出入国在留管理庁の令和6年度在留外国人に対する基礎調査では、必要な支援の上位に言語57.7%、仕事47.2%、人種差別・機会平等・個人尊重39.2%が並びました。待遇だけ整えても、仕事の中身が伝わらず、尊重されている感覚が弱ければ、安心して働き続ける判断にはつながりません。
ここで大事なのは、生活支援、日本語学習、評価運用を別々の話にしないことです。本人から見ると、今日の指示が分かるか、困りごとを言えるか、頑張りがどう返ってくるかは一つながりの体験といえます。
| 支援領域 | 割合 | 最初に整えたい内容 |
|---|---|---|
| 言語 | 57.7% | 現場用語、やさしい日本語、復唱の型をそろえる |
| 仕事 | 47.2% | 仕事内容、完了条件、評価基準を数字で伝える |
| 公平な扱い | 39.2% | 相談窓口、ハラスメント防止、上司向け研修を置く |
支援の優先順位が見えると、離職を本人の気持ちの問題にしなくて済みます。定着に効くのは、通じる言葉、分かる仕事、安心して声を上げられる環境です。
外国人材が会社に期待するサポート 定着率を上げる具体策
企業側は日本語と相談導線でつまずきやすい
会社側にも、本人が感じる困りごとと重なる詰まりがあります。厚生労働省の令和6年外国人雇用実態調査の概況では、日本語能力などのためにコミュニケーションが取りにくいと答えた事業所が43.9%で最も多く、在留資格申請などの事務負担24.7%、在留期間の上限21.5%、文化や生活習慣の違い20.9%が続きました。
この並びを見ると、制度対応と会話の工夫を切り離せないことが分かります。相談先が見えないまま、仕事と生活の不安が積み上がる会社ほど、入社初期のズレを拾いにくくなります。
| 企業が感じる課題 | 割合 | 現場で起きやすいこと |
|---|---|---|
| 日本語面で意思疎通を取りにくい | 43.9% | 安全指示があいまいなまま流れる |
| 在留資格申請などの事務負担 | 24.7% | 更新期限や提出書類の確認が後ろ倒しになる |
| 在留期間の上限 | 21.5% | 育成計画を長期で引きにくい |
| 文化や生活習慣の違い | 20.9% | 休日、宗教、報連相で行き違いが起きる |
出典は厚生労働省の令和6年外国人雇用実態調査の概況です。
定着率が下がる会社に起きやすい3つのすれ違い
外国人材が安心して働き始められる受け入れ体制の整備方法を知りたい方は、「受け入れ・定着の成功法則(無料・全10P)」で実践ステップを確認できます。
早期離職が起きる会社では、会話の量より会話の設計がずれています。指示の出し方、相談導線、日本人側の話し方の3つがかみ合わないと、小さな違和感がそのまま退職理由になります。
指示が曖昧で仕事の終わりが伝わりにくい場面
厚生労働省のコミュコツでは、ゆっくり話す、1文に1つの内容だけを入れる、簡単な語を使う、終わりの状態を具体的に言う、復唱してもらう、といった基本が勧められています。現場では、急いでいるときほどここが抜けやすく、本人は分かったつもりのまま作業を進めてしまいます。
危ないのは、分からなかった側の責任に寄せる空気です。完了条件まで言葉で切り出せていない指示は、日本語力の問題だけではなく、教える側の準備不足でもあります。
よくある行き違い
よくある状況
上司はいつものように終わったら声をかけてと言ったつもりでも、本人は何をもって終わりとするか分からず、途中で次の作業に移ります。
原因
作業の完了状態、報告のタイミング、優先順位が一文にまとまっていません。
回避方法
- ・ 1回で伝える内容を1つに絞ります
- ・ 終わりの形を写真か実物で見せます
- ・ 最後に本人の言葉で言い直してもらいます
困っても相談先が見えにくい状態
出入国在留管理庁の令和6年度在留外国人に対する基礎調査では、困ったときにどこへ相談すればよいか分からなかった人が16.2%いました。相談窓口の名前だけ置いて、返答する人や時間帯が決まっていない会社では、生活の不安も仕事の不満も表に出にくくなります。
相談を一つの箱にまとめすぎるのも失敗しやすい点です。直属上司には言いにくい人間関係や生活費の悩みまで同じ窓口に入れると、本人は最後まで黙りがちです。
- 仕事の相談: 直属上司と教育担当が、作業理解と安全面を受けます
- 生活の相談: 総務やメンターが、住居、病院、行政手続を受けます
- 緊急連絡: 勤務時間外でも使える連絡先を最初に共有します
相談導線は、だれが一次受けをするか、どの言語で返すか、どこまで記録するかまで決めて初めて動く仕組みです。ここがあいまいだと、離職の前に出る小さなサインを見逃しやすくなります。
日本人側の話し方がそのままになっている状態
会話のズレは、外国人側だけが直すものではありません。厚生労働省のコミュコツでは、はいかいいえで答えられる問いに分ける、1つずつ順番に聞く、実物や指さしを使う、といった工夫も挙げています。
文化庁のやさしい日本語ガイドラインでも、やさしい日本語は通訳や翻訳と並んで有効な手段です。日本人社員がいつもの速さと省略で話し続ける限り、教育コストは本人側にだけ積み上がります。
| 避けたい言い方 | 言い換え | 確認方法 |
|---|---|---|
| あとでまとめてやっておいて | この3つを、15時までに終えてください | 何をいつまでにやるかを言い直してもらう |
| だいたいこのくらいで | 見本と同じ形にしてください | 見本と本人の成果物を並べる |
| 分かったよね | 今の内容をあなたの言葉で話してください | 復唱を聞いてズレをその場で直す |
外国人定着に効くコミュニケーション改善策7選
効きやすい順番は、入社前の期待合わせ、入社直後の通訳付き説明ではなく日常会話の整備、3か月までの面談、日本人側の教え方の見直しです。施策を増やすより、現場で回る型を先に決めるほうが効果は出やすくなります。
1. 入社前説明で期待値を合わせる
最初の会話は入社後ではなく、採用が決まった時点から始まる段階です。厚生労働省の受け入れ・定着マニュアルでは、残業、夜勤、住居、生活費、病院、宗教面の留意点まで具体的に話しておくことが勧められています。
ここで期待を合わせておくと、本人は入社後の違和感を不信感に変えにくい状態です。逆に、仕事内容だけ伝えて生活面を後回しにすると、最初の数週間で気持ちが切れやすくなります。
- 数字で伝える: 残業時間、夜勤の開始時期、給与の内訳をぼかさず話します
- 写真で伝える: 現場、休憩室、住居周辺、通勤経路を見せます
- 最後に確認する: 本人が自分の言葉で働き方を言える状態まで持っていきます
2. やさしい日本語で1文1内容にする
やさしい日本語は、語彙を幼くすることではありません。厚生労働省のコミュコツにある通り、ゆっくり話す、1文に1つだけ入れる、簡単な語に置き換える、終わりの状態を具体的に言う、この4点をそろえる方法です。
文化庁のガイドラインでも、やさしい日本語は翻訳や通訳と組み合わせて使える手段と整理されています。現場で毎回通訳を呼べない会社ほど、上司が話し方を変える意味は大きくなります。
実践!「伝わる日本語」で指示を出すための言い換え表現集
3. 復唱と質問で理解確認をする
理解確認は、分かりましたかと聞くだけでは足りません。コミュコツでも、相手に繰り返してもらう、はいかいいえで答えられる問いに分けるといった手順が挙げられています。
現場では、作業前、作業中、作業後の3回に分けて確認するとズレが残りにくい場面です。たとえば作業前は手順、作業中は安全、作業後は完了条件の3点を聞くだけでも、再説明の手間が減ります。
4. 写真・実物・多言語資料で補う
言葉だけで通そうとすると、作業のイメージ差が残りやすくなります。写真、現物、色分け、ピクトグラム、多言語の簡易資料を合わせると、会話の負荷を一気に下げられます。
特に安全に関わる内容は、口頭だけにしない運用が必要です。見本を置き、掲示物の位置を固定し、同じ表現で説明するだけでも現場が整いやすい流れです。
| 補助ツール | 使う場面 | 押さえたい点 |
|---|---|---|
| 写真付き手順書 | 作業前の説明 | 完了状態が一目で分かる写真を使います |
| 実物見本 | 品質確認 | よい例と悪い例を並べます |
| 多言語の簡易資料 | 初日説明と生活案内 | 重要語を減らし、配布後に口頭確認も入れます |
5. 相談窓口と3か月面談を分けて動かす
特定技能では、生活オリエンテーション、相談対応、定期面談が制度上の支援に入ります。特に定期面談は、支援責任者や支援担当者が本人と上司の双方から話を聞く枠として位置付けられており、仕事と生活を切り分けて確認する運用が欠かせません。
面談は3か月に1回だけでは足りない場面もあります。入社初月は毎週の短い確認、2か月目以降は月1回、制度上の定期面談は別で残すと、日常の不安と制度対応を混ぜずに追えます。
6. 日本語学習を入社後も続ける
出入国在留管理庁の2025年公表資料では、日本語学習の困りごととして、受講料金が高い15.8%、無料の日本語教室が近くにない13.5%、都合のよい時間帯に利用できない11.3%が挙がりました。入社時研修だけで終えると、現場で必要な言い回しが増えた瞬間に詰まりやすくなります。
TCJグローバルでは、日本語教師がCan-Doアセスメントで現場でできることを見たうえで、業務別の日本語学習を組む形です。入社後6か月の動画レッスンも組み合わせられるため、勤務と両立しながら学びを止めにくくできます。
7. 日本人社員向け研修と評価の見える化を行う
外国人定着を本気で進めるなら、日本人社員の受け入れ側研修を後回しにできません。上司が話し方を変えず、評価基準も人によって違う状態では、本人は何を直せばよいか分からないままです。
評価は、抽象的な頑張りではなく、安全、品質、報告、協働のように分けて伝えると納得感が出ます。面談のたびに、今できていること、次に任せる仕事、そのために覚える言葉をセットで返すと、日々の会話にも筋が通る形です。
- 研修の軸: やさしい日本語、宗教や生活習慣への配慮、ハラスメント防止を短時間で回します
- 評価の軸: 安全、品質、報告、協働を分けて言葉にします
- 面談の軸: できたこと、次に覚えること、困っていることを毎回同じ順で聞きます
入社前から90日までの実行ロードマップ
ここまでの施策を一度に全部やる必要はありません。まずは90日で回る型に絞り、担当者と確認項目を固定すると、現場の負荷を抑えながら改善を始められます。
| 時期 | 主担当 | 確認したい内容 |
|---|---|---|
| 入社前から初日 | 人事、総務、現場責任者 | 働き方、住居、通勤、緊急連絡、初日説明 |
| 1か月目 | 現場責任者、教育担当、メンター | 指示理解、安全、生活不安、相談導線 |
| 2〜3か月目 | 人事、支援担当、上司 | 定期面談、評価、次の役割、日本語学習 |
入社前から初日まで
この時期は、働き方と生活の説明を切らさないことが中心です。初日に配る資料を多言語でそろえ、緊急連絡先、病院、通勤ルート、ゴミ出しまで一緒に確認すると、仕事前の不安を減らしやすくなります。
特定技能では、生活オリエンテーションを一定時間以上行うことが求められる制度要件です。制度対応に合わせて、現場で使う言葉の確認も初日に入れておくと、その後の会話が楽になります。
1か月目
1か月目は、作業理解と生活不安の両方を短い頻度で見る時期です。週1回の面談を10分でも入れ、分からなかった指示、疲れやすい時間帯、相談しづらいことを毎回同じ順番で聞くと変化を追いやすくなります。
この時期に、上司がやさしい日本語を守れているかも確認したいところです。本人だけでなく教える側の会話も点検すると、現場の再説明コストを下げやすくなります。
2〜3か月目
2〜3か月目は、制度上の定期面談と評価面談を切り分けて回す時期です。仕事の理解、安全面、生活面、日本語学習の進み具合を分けて聞くと、次にどこへ手を入れるか判断しやすくなります。
ここで次の役割が見えると、本人は先を考えやすい状態です。逆に、目の前の作業だけ続く状態では、入社初期の緊張が抜けた後に離職リスクが上がりやすくなります。
外部委託を検討したい場面
自社だけで回しきれない場面は早めに見極めたほうが安全です。複数拠点で同じ質を保ちたいとき、多言語で初期説明をまとめたいとき、制度対応と日本語教育を同時に回したいときは、外部の力が効きます。
特に、登録支援機関業務と現場日本語の設計が別々だと、制度は守れても定着につながりにくくなります。相談窓口、定期面談、日本語学習、評価の返し方まで一体で見られる体制かどうかが分かれ目です。
- 内製だけでは重い場面: 多言語オリエンテーション、面談記録、拠点ごとの差の吸収
- 外部の力が効く場面: Can-Doアセスメント、業務別日本語研修、登録支援機関業務の並走
- 判断の目安: 誰が会話の責任を持つかを社内で決めきれないなら、早めに相談したほうが混乱を防ぎやすくなります
TCJグローバルでは、日本語教師によるCan-Doアセスメント、業務別の日本語教育、入社後6か月の動画学習、登録支援機関業務までまとめて組めます。制度対応だけでなく、現場で通じる会話まで見直したい会社には相性がよい形です。
まとめ
外国人定着を左右するのは、本人の日本語力だけではありません。言葉の通り方、相談先の見え方、評価の返し方をつなげて整える会社ほど、入社初期の離職を防ぎやすくなります。
まずは、入社前説明、やさしい日本語、復唱、相談窓口、3か月面談の5点から着手すると全体が回り始めます。90日で型を作り、そのあとに日本語学習と評価運用を重ねる進め方が現実的です。
よくある質問
Q1. 外国人定着で最初に直すべき点はどこですか。
A. 最初に見たいのは、指示の出し方と相談導線です。入社前説明、1文1内容の指示、仕事と生活を分けた相談窓口の3点がそろうと、初期の行き違いを減らしやすくなります。
Q2. 特定技能ではどこまで支援が必要ですか。
A. 住居確保の補助、生活オリエンテーション、日本語学習の機会、相談対応、定期面談などが制度上の支援に入ります。社内運用だけで持ちきれないなら、登録支援機関を含めた体制を早めに整えたほうが安全です。
Q3. 通訳がいれば、やさしい日本語は不要ですか。
A. 不要にはなりません。通訳が入っても、日常の指示や安全確認は現場の日本人社員が毎日行うため、上司自身が分かりやすく話せる状態を作る必要があります。
Q4. 日本語学習は入社後も続けるべきですか。
A. 続けるべきです。出入国在留管理庁の2025年公表資料でも、費用や時間の都合で学び続けにくい実態が出ており、勤務と両立できる短時間学習を会社側で組んだほうが止まりにくくなります。
Q5. 相談窓口は人事だけが持つべきですか。
A. 人事だけに寄せないほうが回りやすくなります。仕事の相談は現場責任者、生活や制度の相談は人事や総務、日常の声かけはメンターという形で役割を分けると、本人が声を上げやすくなります。
Q6. 現場が忙しくても90日設計は必要ですか。
A. 必要です。忙しい職場ほど、その場しのぎの説明が増えてズレが大きくなりやすいため、最初の90日だけでも担当者、確認項目、面談頻度を決めておくと後の手戻りを減らせます。
