近年、人材不足を背景に外国人アルバイトの採用に取り組む企業が増加しています。外国人アルバイトが可能な在留資格は「留学」「特定活動」「家族滞在」の3つです。しかし、外国人留学生をアルバイトとして採用する際は「資格外活動」となるため、雇用する側が知っておくべき法律や手続きがあります。本記事では、外国人留学生アルバイトを雇用する際の注意点について詳しく解説します。外国人留学生アルバイトの現状留学生数の推移と国籍別内訳日本学生支援機構の「外国人留学生在籍状況調査」によると、2023年5月1日現在の外国人留学生数は279,274人で、前年度比20.8%増加しました。国・地域別では、中国が115,493人(前年度比11.2%増)と最多で、次いでネパール37,878人(56.2%増)、ベトナム36,339人(2.8%減)となっています。2022年3月以降の水際対策緩和や10月からの入国者数上限撤廃により、留学生の新規入国が進み、コロナ禍以降初めて留学生総数が増加に転じました。在学段階別では、日本語教育機関の留学生数が過去最多を記録し、出身地域別では概ねすべての地域で大幅な増加が見られました。参考:https://www.mext.go.jp/amenu/koutou/ryugaku/141269200003.htm?utm_source=chatgpt.com出典:https://www.studyinjapan.go.jp/ja/_mt/2024/04/data2023z.pdf 留学生のアルバイト従事状況留学生のアルバイト従事率は65.2%に上ります。職種別では、「飲食業」が39.2%と最も多く、次いで「営業・販売(コンビニ等)」が28.4%、「工場での組立作業」が6.0%となっています。出典:https://www.studyinjapan.go.jp/ja/_mt/2024/10/Seikatsu2023.pdf外国人留学生アルバイトの時給外国人留学生の時給は、日本人アルバイト同様、最低賃金を遵守する必要があります。調査によると、「1,000円以上1,200円未満」が50.2%と最も多く、次いで「1,200円以上1,400円未満」が20.5%となっています。出典:https://www.studyinjapan.go.jp/ja/_mt/2024/10/Seikatsu2023.pdf日本語学校留学生のアルバイト従事状況日本語学校では主に年4回の入学時期があり、そのタイミングで仕事を探す学生が増加します。2024年4月下旬に実施したTCJ独自に実施した留学生向けアルバイトの意識調査では、アルバイト中の学生が30.3%、アルバイトを探している、またはこれから探す予定の学生が合わせて47.5%と、多くの学生がアルバイトを希望していることがわかりました。出典:TCJ留学生向けアルバイトの意識調査(調査期間/2024年4月23日~30日、回答数/267名)日本語学校留学生の希望職種同調査によると、学生が希望する職種はコンビニスタッフと飲食店スタッフが大半を占めています。また、ホテルや英会話講師・翻訳といった語学を活かした職種も人気があります。一方で、具体的な職種を決めていない、どんな職種でもよいという学生も一定数存在します。出典:TCJ留学生向けアルバイトの意識調査(調査期間/2024年4月23日~30日、回答数/267名)外国人留学生アルバイト雇用の注意点具体的な手続きに入る前に、まず留学生を雇用する上で絶対に押さえておかなければならない「大原則」が3つあります。これらの原則は、留学生の本分である「学業」を守るために国が定めたルールです。もし知らずに破ってしまえば、企業側が「不法就労助長罪」という重い罪に問われる可能性も否定できません。安心して留学生に活躍してもらうためにも、この3つの原則は必ず覚えておきましょう。原則1:「資格外活動許可」なくして就労はあり得ない大前提として、在留資格「留学」は、あくまで日本で勉強するための資格です。そのため、留学生がアルバイトとして働くことは、本来の活動の「資格外」にあたります。留学生がアルバイトをするためには、必ず事前に入国管理局から「資格外活動許可」を得ていなければなりません。この許可を得ずに留学生を働かせてしまうと、その時点で不法就労となり、雇用主もその責任を問われることになります。これは、留学生アルバイトを雇用する上での、基本中の基本と言えるでしょう。原則2:「週28時間」の壁は1分でも超えてはいけない留学生のアルバイトは、学業との両立が前提となるため、労働時間にも厳格な制限が設けられています。その上限が「1週間で28時間以内」というルールです。ここで特に注意すべきは、この時間は掛け持ちしている全てのアルバイト先の労働時間を合計した時間であるという点です。たとえ自社での勤務が数時間であっても、合計で28時間を1分でも超えればルール違反となってしまいます。ただし、学校が定める夏休みなどの長期休業期間中は、この制限が「週40時間以内」まで緩和されます。この特例を適用する際は、学則上の正確な休業期間を確認することが求められます。原則3:「禁止されている職種」は清掃業務でもNG「資格外活動許可」があれば、どんな仕事でもできるわけではない、という点も忘れてはなりません。風俗営業等が営まれている店舗での就労は、法律で固く禁じられています。パチンコ店麻雀店照度の低いバーナイトクラブゲームセンター(一部の射幸心をそそる筐体が設置されている場合)ラブホテルやそれに類する施設施錠できる個室があり、広さが5平方メートル以下ネットカフェや漫画喫茶ダンスホール具体的には、上記などがこれに該当します。そして最も重要なのは、これらの店舗では直接的な接客だけでなく、皿洗いや清掃、店舗のビラ配りといった間接的な業務も一切許可されていないということです。この認識が不足しているために、意図せず法律違反を犯してしまうケースが後を絶ちません。判断に迷う業態の場合は、安易に自己判断しないことが肝要です。採用担当者のための留学生雇用の流れ&チェックリスト留学生アルバイトの雇用は、正しい手順さえ踏めば、決して難しいものではありません。ここでは、応募から採用後の管理までを3つのステップに分け、それぞれの段階で「何をすべきか」を具体的に解説します。STEP1:応募〜面接での確認事項【必須チェックリスト】候補者と初めて会う面接の場は、日本語能力だけでなく、法律で定められた就労条件を満たしているかを確認する最も重要な機会です。以下の項目は、必ず候補者に提示してもらい、一つひとつ指差し確認をしながら進めましょう。□ 在留カードの「表面」 まず、カードの表面で在留資格が「留学」になっていることを確認します。次に、「在留期間」の満了日が過ぎていないかも必ずチェックしてください。□ 在留カードの「裏面」 次に、カードの裏面を確認します。下部にある「資格外活動許可欄」に「許可」のスタンプが押されていなければ、アルバイトとして雇用することはできません。もし、この許可を得ていない学生を採用したい場合は、まず本人に最寄りの出入国在留管理局で許可申請を行うよう促してください。□ 在留カードの「有効性」 念のため、出入国在留管理庁のウェブサイトにある「在留カード等番号失効情報照会」システムを利用し、提示された在留カードが有効なものかを確認することをお勧めします。これにより、偽造カードによるトラブルを未然に防ぐことができます。□ 就労時間の「上限」 「アルバイトは週に28時間まで、と決められていますが、このルールは知っていますか?」と、必ず口頭で質問し、本人がルールを正しく理解しているかを確認しましょう。□ 掛け持ちの「有無」 「今、他にアルバTイトはしていますか?」と質問し、もし掛け持ちをしている場合は、その勤務時間と自社での勤務時間を合わせて週28時間を超えないかを必ず確認してください。この合計時間の管理が、最もトラブルになりやすいポイントです。STEP2:採用決定〜入社までの手続き面接で上記の項目をクリアし、無事に採用が決定したら、次に入社に向けた手続きを進めます。雇用契約書の作成と説明 後のトラブルを防ぐため、必ず書面で雇用契約を締結します。その際、給与や労働時間、業務内容といった重要な条件は、本人の母国語を併記するか、少なくとも平易な「やさしい日本語」で丁寧に説明し、双方の認識にズレがない状態にしておくことが大切です。ハローワークへの届出 外国人(留学生を含む)を雇用した場合、企業はハローワークへ「外国人雇用状況の届出」を行う義務があります。これは、採用した月の翌月末までが提出期限となっているため、忘れずに行いましょう。届出は、管轄のハローワーク窓口のほか、オンラインでも申請可能です。STEP3:雇用開始後の厳格な管理実際に働き始めてからの労務管理も、日本人アルバイトとは異なる注意が必要です。シフト管理の徹底 特に掛け持ちをしている留学生の場合、本人の自己申告だけに頼らず、定期的に他社でのシフト状況を確認するなど、企業側が責任をもって合計労働時間を管理する体制を整えることが、リスク回避に繋がります。長期休暇の特例 夏休みなどの長期休暇中は、労働時間の上限が「1日8時間・週40時間」まで緩和されます。ただし、これはあくまで大学や日本語学校の学則で定められた公式な休業期間に限られます。その期間を正確に把握し、特例を適用することが重要です。まとめ外国人留学生アルバイトの雇用には、在留資格の確認から労働時間の管理、ハローワークへの届け出まで、様々な注意点があります。これらの点を十分に理解し、適切に対応することで、外国人留学生の力を活かした職場環境を整えることができます。留学生アルバイトの採用をご検討中の企業様は、株式会社TCJグローバルにご相談ください。当社は日本語教育における36年の実績を基に、国内外で日本語教育を軸とした人材育成に取り組んでいます。ベトナムやネパールをはじめとする海外拠点での日本語教育や就労支援、外国人労働者を雇用する企業向けの日本語教育コンサルティング、ニーズに応じた外国人材のご紹介サービスなど、幅広いサポートを提供しております。お気軽にお問い合わせください。